平成19年2月13日最高裁判所第三小法廷 判決

  • 基本契約なく、2本の証書貸付が有った場合、証書貸付間で過払金充当は生ぜず、分断となる
  • 過払金の利息は商事利息の年6%ではなく、民事利息の年5%である

【要点】

  • 証書貸付が2本あり、第1貸付返済中に第2貸付が開始しても、第1貸付から生じた過払金を第2貸付に充当することはできません。
  • 商法では株式会社が有する債権に特に利息の定めがないときは年6%の利息がつきますが、過払金は利息制限法に基づき発生したものであるため年5%の利息しか発生しません。

【判決】

上告人は貸金業者、被上告人は借主です。

上告人と被上告人の間の取引は次のようなものでした。

第1貸付 平成5年3月26日付300万円の貸付(年利40.004%)

最終支払日を同年5月末日としたが、同日ころ、元本の弁済期を期限の定めのないものとする旨合意が成立。

上告人は、平成5年4月26日から平成15年12月19日まで返済を行った。
平成8年10月31日以後、過払金が発生している。
第2貸付 平成10年8月28日に100万円の貸付(年利40.004%)

最終支払日を平成10年9月27日としたが、同日ころ、元本の弁済期を期限の定めのないものとする旨合意が成立。

完済されておらず、債務残高あり。

なお、上告人と被上告人間に基本契約は締結されておらず、両契約とも証書貸付です

第2審の広島高裁松江支部は、基本契約がなかったとしても、過払金を考慮して全体として借入総額が減少することを望み、複数の権利関係が発生するような事態が生ずることは望まないのが通常の合理的意思であると考えられ、本件第1貸付についての過払金は、本件第2貸付けに係る債務に当然に充当されるとした。 また過払金の返還債務は、商事法定利率の年6分としました。

最高裁は次の通り述べて、第1貸付から生じた過払金を第2貸付に充当することを認めませんでした。
「貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において、第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し、その後、同一の貸主と借主との間に第2の貸付けに係る債務が発生したときには、その貸主と借主との間で、基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており、第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか、その貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り、第1貸付け過払金は、第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず、第2の貸付けに係る債務には充当されないと解するのが相当である。」が、本件では特段の事情はみられない。

また、最高裁は、次の理由を述べて、過払金の利息は年5分としました。
「なぜなら、商法514条の適用又は類推適用されるべき債権は、商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものでなければならないところ、上記過払金についての不当利得返還請求権は、高利を制限して借主を保護する目的で設けられた利息制限法の規定によって発生する債権であって、営利性を考慮すべき債権ではないので、商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものと解することはできないからである。」

【解説】

この判決は「貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合に、第1の貸付けで過払金が発生し、その後第2の貸付けに係る債務が発生したとしても、その後、第2の貸付けに係る債務が発生したときには、特段の事情のない限り、第1の貸付けに係る過払金は、第2の貸付けに係る債務には充当されない。」としました。

業者が、基本契約ある場合の過払金充当合意が争われている事案でも、この判決をよく引用しますが、この最高裁判決の事案は、当事者間に金銭消費貸借について基本契約はなく、単純に2つの証書貸付があっただけでした。

基本契約ある場合、一方の過払金が他の貸付に充当されることはないという、当たり前の判決であり、引用されるべき判決ではありません。

なお、この判決は、過払金の利率は年6%ではなく、年5%であるとも判示しています。

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