最高裁判決の要点と解説

銀行振込の場合でも、みなし弁済成立のためには18条書面の交付が必要となる

平成11年1月21日第一小法廷判決

要点

銀行振込で返済された場合も、返済後直ちに業者が18条書面(貸金業法18条の規定をきちんと守って作成された領収証)を債務者に交付していなければ、グレーゾーン金利は認められず、過払金を請求できます。

判決

最高裁は、利息制限法1条1項に定める制限額を超える利息の支払いが、貸金業法43条1項によって、有効な利息の支払いとみなされるためには、「右の支払が貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってされたときであっても、特段の事情のない限り、貸金業者は、右の払込みを受けたことを確認した都度、直ちに、同法18条1項に規定する書面を債務者に交付しなければならない」としています。

すなわち、銀行振込で返済した場合も、業者は領収証を債務者に交付しないと過払金を払わなければならないとしたのです。

解説

貸金業法第18条第2項は、銀行振込により弁済された場合は、借主が請求した場合に限り18条書面を発行すればいいとしています。
そのため、銀行振込で返済がなされ、かつ借主が18条書面の交付を求めていない場合は、18条書面を交付しなくても、貸金業法第43条1項が適用され、グレーゾーン金利の支払も有効な弁済とみなされるという解釈が従前はありました。

しかし、この最高裁判決によりこの解釈は否定されました。

ただ、業者は現在でも「銀行振込だから18条書面の交付は不要。業者が交付しなくとも、悪意の受益者に当たらない」という主張を平気でしてきます(裁判所は認めませんが)。

参考条文

貸金業法第18条

  1. 貸金業者は、貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは、その都度、直ちに、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない。
    • 貸金業者の商号、名称又は氏名及び住所
    • 契約年月日
    • 貸付けの金額(保証契約にあっては、保証に係る貸付けの金額。次条及び第21条第2項第4号において同じ。)
    • 受領金額及びその利息、賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額
    • 受領年月日
    • 前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
  2. 前項の規定は、預金又は貯金の口座に対する払込みその他内閣府令で定める方法により弁済を受ける場合にあっては、当該弁済をした者の請求があった場合に限り、適用する。

17条書面に返済期間・返済金額の記載がない場合、業者は悪意の受益者となる

代表弁護士中原俊明
中原 俊明法律事務所ホームワン 代表弁護士

東京都出身、1987年 弁護士登録(東京弁護士会所属)、ホームワンの代表弁護士 中原です。一件のご相談が、お客さまにとっては一生に一度きりのものだと知っています。お客様の信頼を得て、ご納得いただける解決の道を見つけたい。それがホームワンの願いです。法律事務所ホームワンでは過払い金・借金問題に関する相談を受け付けています。

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