平成23年5月18日最高裁判所第二小法廷 決定

複数の業者に対する訴訟で、請求債権の合計額が140万円超となった場合、各請求の裁判管轄が受訴した地方裁判所にある場合は、民事訴訟法9条が適用され地裁に管轄が認められる

【要点】

複数の業者に対する請求で、同じ裁判所の管轄の事件であれば、一つ一つの請求金額が140万円以下でも、合計で140万円を超えていれば、地方裁判所に提起することが可能です。

【判決】

最高裁は「法(民事訴訟法のこと。以下同じ。)38条後段の共同訴訟であって、いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて、法7条ただし書により法9条の適用が排除されることはないというべきである。なぜなら、法7条は、法4条から法6条の2までを受けている文理及び条文が置かれた位置に照らし、土地管轄について規定するものであって事物管轄について規定するものではないことが明らかであり、また、法7条ただし書の趣旨は、法38条後段の共同訴訟において、一の請求の裁判籍によって他の請求についても土地管轄が認められると遠隔地での応訴を余儀なくされる他の請求の被告の不利益に配慮するものであると解されるのであり、簡易裁判所ではなく当該簡易裁判所を管轄区域内に置く地方裁判所において審理及び裁判を受けることにより被告が不利益を被ることがあり得るとしても、上記と同様の配慮を要するとはいえないからである。」として、
「本件各請求がいずれの被告に係る部分も受訴裁判所である名古屋地方裁判所が土地管轄権を有しているから、相手方に係る訴訟を含む本件訴訟は、訴訟の目的の価額が法9条1項本文により140万円を超えることになり、同裁判所の事物管轄に属するものというべきである。」としました。

【解説】

本件訴訟は、一つ一つの過払金債権は140万円以下ですが、全てを合算すると140万円を超えるため、第9条の「一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする」との規定に従い、地方裁判所に提起されたものですが、被告が複数であったため、被告業者のうち1社から簡裁に移送するよう申立てを受けました。

原審の高裁判決はその申立てを認め、その理由を次のように述べています。

  • 民事訴訟法7条但書によれば、数人からの又は数人に対する訴えについては、「訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき」に限り、そのうちの一つの管轄裁判所に訴えを提起できるとしている。
  • 本件訴訟は、過払金請求という同種の請求ではあるものの、複数の被告に対する請求であり、併合は認められず、したがって民事訴訟法第9条の「一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする」との規定が適用される余地はない。

しかし最高裁判決は、法7条は土地管轄について規定したものであって、物の価格によって管轄を地裁と管轄に分ける事物管轄には及ばないとして、9条を適用し地裁の管轄を認めました。

この結果、例えば東京に本社を持つA社、B社、C社に対する過払金請求権を有する場合、3個の請求は、過払金請求権という共通性はあるものの、関連性は薄いため、一つの訴訟で請求することができませんが、3件の管轄が全て東京地裁のため、共同訴訟を提起でき、請求額が合計して140万円を超えれば、第9条1項が適用され、地方裁判所で裁判することが可能です。

【参考条文】

民事訴訟法 第7条

一の訴えで数個の請求をする場合には、第4条から前条まで(第6条第3項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第38条前段に定める場合に限る。

民事訴訟法 第9条

一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。ただし、その訴えで主張する利益が各請求について共通である場合におけるその各請求については、この限りでない。

民事訴訟法 第38条

訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。

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