文化放送『くにまるジャパン』に中原俊明弁護士が出演 115回テーマ 「放射能と風評被害」編

2011年05月03日

115回テーマ 「放射能と風評被害」編
2011年5月3日 午前9:45~放送

文化放送 『くにまるジャパン』
“得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室”

出演
・番組MC 野村邦丸さん
・番組パーソナリティ 鈴木純子さん
・法律事務所ホームワン 中原 俊明(なかはら としあき)代表弁護士

115回テーマ 「放射能と風評被害」編(5月3日 午前9:45 ~)

■放送内容要約(実際の放送内容は少し異なります)

邦丸
東日本大震災からおよそ五十日が過ぎました。このところ大きな問題となっているのが、福島第一原発の放射能と、それにまつわる風評被害です。先日も、茨城県つくば市で、福島から転入する人が放射能汚染を調べる「スクリーニング検査」の証明書提示を求められた、という問題がありました。

中原
つくば市長が「被災者への配慮が足りなかった」と謝った事件ですね。なんともやるせない話でした。

またこの他にも、川崎市で被災地のゴミ受け入れに関して、問い合わせや苦情が相次ぐという事件もありました。自分や家族の安全を守りたいという気持ちが強すぎると、かえって差別する側や、加害者になってしまうこともある。難しい問題だと思います。

邦丸
それもこれも目に見えない放射能の怖ろしさですね。農産物の買い控え、観光業への打撃など、「風評被害」という言葉もよく耳にしますが、これは昔からあった言葉なんでしょうか?

中原
「風評被害」という言葉が国会で初めて使われたのは、1954年の「第五福竜丸事件」のときでした。

マーシャル諸島でのアメリカの水爆実験で、マグロ漁船、第五福竜丸が放射性降下物、いわゆる「死の灰」を浴びた。これが大々的に報道されたことで、マグロを始めとする魚介類が、安全なものまで売れなくなってしまった…この間接的な損害を「風評被害」と呼んだのが、始まりです。

邦丸
風評被害では、原子力関係では東海村の臨界事故、また、O-157による食中毒や、ダイオキシン汚染、BSE、鳥インフルエンザなどが問題となりました。東海村のケースは今回の参考になりそうですね。

中原
1999年に起きた東海村の事故では「原子力損害賠償法」が、初めて適用されました。原子力事業者であるJCOに対し風評被害など被曝に伴う補償請求がおよそ8千件。うち7千件で、保障や賠償に応じています。ただ屋内退避者の休業補償や、農産物の風評被害を含む営業的損害は認められましたが、心的外傷後ストレス障害、いわゆる「PTSD」は補償の対象外でした。

邦丸
「O‐157」の時は、厚生省が「原因がカイワレ大根の可能性が強い」と発表したんですよね。

中原
その後、厚生大臣だった菅さんが、カイワレを食べるパフォーマンスをした。邦丸さんもご記憶のことと思います。

邦丸
あの時点で、国が風評被害の責任を認めたんですよね。

中原
それが違うんです。生産業者は国に対して損害賠償を求め、最終的には最高裁判所まで争いが続きました。そしてようやく、国の損害賠償責任が認められたんです。

邦丸
そうだったんですか! 身近な例でいえば、友達同士の会話で「あの店の食材、怪しいよな」なんて話した場合、 これで責任を問われることはあるんでしょうか。

中原
友人との会話程度では罪にはならないと思います。ですが、根拠もないのにブログに書いてみたり、相手が公にすることがわかっているのに話したりすると、名誉毀損や偽計業務妨害で罰せられたり、損害賠償を求められる可能性もあるでしょう。

たとえ相手の安全を思って伝えたとしても、不確かな情報だと加害者になる可能性があると、覚えておいてください。

見えない恐怖にさらされるストレスを誰もが感じている今、自分が受け取った情報が正しいのか、確実なものなのか、ワンクッション置いて考えていただければと思います。