最高裁判決の要点と解説

一度の遅延を理由に、それ以降の全期間、遅延損害金が発生することを主張しても信義則に反しない

平成21年9月11日最高裁判所第二小法廷判決(平成19年(受)第1128号)

要点

業者が借主に対して、2回にわたって証書貸付を行い、その返済中、支払期限を徒過し、期限の利益を喪失したが、その後3回目の貸付を行ったという事案です。

本判決は、
①業者が期限の利益喪失後も一括請求せず、分割金の支払いを受領し続け、②通常利息の通常利率と遅延損害金の遅延利率とが同一ないし近似しているため、借主も遅延損害金を取られていることに気づかず、③1回目、2回目貸付の何れにおいても遅延を生じた後に3回目の貸付をしているという事情があるだけをもって、「業者が期限の利益を喪失したと主張することが、信義則に反し許されない。」ということはできないとしました。

ただし、同日付のもう一つの最高裁判決(平成21年(受)第138号)の事案にみられるような事情があった場合は、業者が期限の利益を主張することが信義則に反し許されません。

期限の利益喪失 例えば50万円の貸金を、毎月2万円ずつ支払う約束があったとします。ところが支払いが遅れ、一括請求される場合、これを「期限の利益を喪失する」といいます。

判決

上告人は、被上告人に対して以下の貸付を行いました。
本件貸付①:平成15年3月6日に400万円、利息年29.0%、遅延損害金年29.2%
本件貸付②:平成16年4月5日に350万円、利息年29.0%、遅延損害金年29.2%
本件貸付③:平成17年6月27日に300万円、利息及び遅延損害金年29.2%

本件貸付①、②は平成16年9月1日の支払期日に、本件貸付③は平成17年8月1日の支払期日に、全く支払をしておらず、期限の利益を喪失した。
いずれの貸付けについても、上記各支払期日の後、当初の約定で定められた支払期日までに弁済したことはほとんどなく、支払期日よりも1か月以上遅滞したこともあった。

原審の高松高裁判決は以下の事情があることを理由に、上告人が被上告人に期限の利益喪失を主張するのは信義則に反するとしました。
本件事情① 被上告人が本件特約により本件各貸付について期限の利益を喪失した後も元利金の一括弁済を求めず、同被上告人からの一部弁済を受領し続けたこと
本件事情② 本件各貸付けにおいては、約定の利息の利率と約定の遅延損害金の利率とが同一(29.2%)ないし近似(29.0%と29.2%)していること
本件事情③ 被上告人が本件貸付①、②について期限の利益を喪失した平成16年9月1日後の平成17年6月27日に本件貸付け③行ったこと

本最高裁判決は、本件事情①及び②の事実だけから、
「上告人が本件各貸付けについて期限の利益を喪失した後に、領収書兼利用明細書に上記記載(弁済金を遅延損害金のみ又は遅延損害金と元金に充当する旨記載)をしたことに利息制限法を潜脱する目的があると即断することはできない。」
本件事情③を考慮しても、「上告人の期限の利益喪失の主張が利息制限法を潜脱する意図のものであるということはできないし、従前の態度に相反する行動となるということもできない。」としました。

そして「原審の掲げる本件事情①ないし③のみによっては、上告人において、被上告人が本件特約により期限の利益を喪失したと主張することが、信義則に反し許されないということはできないというべきである」としました。

解説

同じ日に、同じ第二小法廷が、同じ業者(旧㈱シティズ、現アイフル)の別事件(平成21年(受)第138号)につき、期限の利益喪失主張を信義則に反しないとしたこれと全く逆の結論の判決を言い渡しています。

本判決の事案では、借主が期限の利益を喪失して以降、シティズは借主にずっと遅延損害金を支払わせています。

本来こうするのが当たり前なのですが、こうした業者は少数派で、多くの業者は、支払期日を過ぎればいったんは遅延損害金をとるものの、いったん支払いがあれば、元の通常利息に戻すのです。

シティズも以前は、他の業者と同じく、支払いがあれば通常利率に戻していました。ただこの業者は、多少変則的で、支払期日を過ぎても遅延損害金をとるのですが、支払い日までは年36.5%の遅延利率で計算しますが、支払い日を過ぎたら次の支払い期日まで通常利息と同じ29.8%で計算すると定めていました。

ですから、借主からすれば、利率が元の通常利率に戻っているのですから、期限の利益を喪失したことに気がつかなくても無理はないのです。

こうして見ると、いったん支払があれば通常利息に戻る場合、ないしは、遅延損害金のままではあっても利率だけは通常利率に復する方式の貸付の場合(こんなややこしいことをするのはかつての旧シティズくらいですが)と、いったん支払いがあっても遅延損害金を遅延利率でとり続ける貸付の場合とで、結論に差が出たのではないかと考えられます。

本件訴訟の原審判決も、基本的に最高裁と同じ考え方をしつつ、本件の場合は通常利息の通常利率と遅延損害金の遅延利率が、年29.0%と年29.2%と近接し(本件貸付①、②)、あるいは年29.2%で同一だったため(本件貸付③)、遅延損害金に切り替わったことに借主が気がつかないのではとして、反対の結論になったのですが、「解釈論としてはちょっと無理があるだろう」として、原審判決を取り消したというところでしょう。

過払金の悪意受益者が払うべき利息は過払金発生時から発生する

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