最高裁判決の要点と解説

17条書面に返済期間・返済金額の記載がない場合、業者は悪意の受益者となる

平成23年12月1日最高裁判所第一小法廷判決

要点

カードキャッシングで借入した場合、ATM利用明細に、その時点での最低返済額で払い続けた場合、完済するまでの返済期間が記載されていなかった場合、貸金業法17条の要件に合致しないため、業者は悪意の受益者と推定されます。

業者が、過払金が生じると分かって超過利息を受け取っていた場合、業者は民法第704条にいうところの「悪意の受益者」となり、過払金に利息をつけて返さなければなりません。

判決

本件では、貸金業法17条1項所定の事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)として上告人に交付された各書面には、同条項が要求する「返済期間及び返済回数」や各回の「返済金額」の記載はなく、これに代わるものとして、平成16年9月までは、次回の最低返済額とその返済期日の記載がされていたにとどまり、同年10月以降になって、個々の貸付けの時点での残元利金についてようやく、最低返済額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等の記載がなされるようになりました。

第2審の東京高裁判決は、①後記の平成17年判決が言い渡されるまでは、17条書面に記載すべき事項について下級審の裁判例が分かれており、次回の最低返済額とその返済期日が記載されていれば足りるとする裁判例も相当程度存在し、②監督官庁が貸金業法17条1項各号に掲げる事項のうち特定し得る事項のみ記載すれば足りると読むこともできる通達を出していたとし、貸金業者は、後記平成19年判決がいうところの「貸金業法43条第1項の適用があるとの認識を有し、かつ、そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情」があるので、「悪意の受益者」とは推定されないとしました。

しかし、本最高裁判決は、これを否定し、17条書面に、確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載をしていない場合は、悪意の受益者と推定されるとしました。

同判決は理由を次のように述べています。
「平成17年判決が言い渡される前に、下級審の裁判例や学説において、リボルビング方式の貸付けについては、17条書面として交付する書面に確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載がなくても貸金業法43条1項の適用があるとの見解を採用するものが多数を占めていたとはいえないこと、上記の見解が貸金業法の立法に関与した者によって明確に示されていたわけでもないことは、当裁判所に顕著である。」

「リボルビング方式の貸付けについて、貸金業者が17条書面として交付する書面に確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載をしない場合は、平成17年判決の言渡し日以前であっても、当該貸金業者が制限超過部分の受領につき貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有することに平成19年判決の判示する特段の事情があるということはできず、当該貸金業者は、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法第704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。」

解説

平成17年12月15日付最高裁判決は、貸金業者は、リボルビング方式による貸付けについても、個々の貸付けの際、借主に交付する書面(17条書面)に、確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載をすべき義務があり、これがないときは貸金業法第43条第1項が適用されない(みなし弁済が成立しない)としました。

また、平成19年7月17日最高裁判決は、貸金業者が超過利息を受領したが、その受領につき貸金業法43条第1項が適用されない場合、当該貸金業者が同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り、「悪意の受益者」であると推定されるとしました。

業者は、上記平成17年判決が出るまでは、多くの下級審判決、行政通達が法17条1項の解釈として「返済期間及び返済回数」や各回の「返済金額」の記載はなくとも、次回の最低返済額とその返済期日の記載がされていればよいとしていたと主張しました。平成17年判決が出て以降はともかく、出る前は、「法第43条第1項が適用されると認識するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情」があったと主張し、高裁判決もその主張を認めました。

しかし、最高裁は第17条1項を上告人のいうように解釈する判決が多数だったとはいえず、当該解釈が貸金業法の立法に関与した者によって明確に示されていたわけでもないとし、上告人の指摘するような通達があったとしても、平成19年判決がいう「特段の事情」は存在しないとしました。

旧貸金業法第43条第1項は、利息制限法に反する利息でも、①一定の範囲内の利率(グレーゾーン金利)であれば、②法定事項を記載し書面が、貸付の場合は貸付後速やかに、返済の場合は直ちに交付され、③債務者がそれでも高い利息を任意に支払う限り、「有効な利息の債務の弁済とみなす」と規定していたため、この「みなし弁済」が成立すると、過払金はとれないことになっていました。

参考条文

民法第704条

悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

18条書面が交付されず貸金業法43条1項の適用がなく、貸付時に償還表を交付しただけでは特段の事情ありといえず、悪意の受益者と推定される

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