最高裁判決の要点と解説

取引が完済となった後、基本契約を新たに締結し、借入れが再開された場合、取引は特段の事情ない限り分断となる

平成20年1月18日最高裁判所第二小法廷判決

要点

カードキャッシングの場合、一度完済した後、同じ会社から再度借入れをすることがよくあります。その場合、一度完済した際に発生している過払金を、再開された借入金に充てることができるかが問題になります。古い取引も新しい取引も、一つの連続した取引と考え、過払金を計算するやり方(一連計算)と、取引はそれぞれ別物であり、過払金も別々に計算するやり方(分断計算)があります。

分断計算は、過払金額も少なくなり、古い取引の過払金だけが時効でなくなってしまうこともあるため、一連計算のほうが借主側に有利です。最高裁は、完済した後、一定のブランク期間を経て、再度借入れをする際に、新しく契約を結び直したか、否かによって、全く扱いを変えています。

本件は新しく契約を結び直して借入をれ再開したケースのため、前の取引とは別取引ということで、分断となります。ただ、

  1. 前の取引期間と比べブランク期間がかなり短い
  2. 前の取引完済時に契約書も破棄しなかった
  3. カードもそのまま使える状態であった
  4. 契約条件が同一
  5. 業者から勧誘があって
  6. そうした勧誘の結果再度借り入れた等

借主側に有利な事情があれば一連計算を認める場合もあるとしています。

判決

上告人は貸金業者、被上告人は借主です。

取引1と取引2の取引期間は次のとおりであり、3年弱のブランクがありました。
またそれぞれの取引開始に先立って基本契約1、2が締結されています。

取引1

平成2年9月3日~平成7年7月19日
平成2年9月3日付契約(基本契約1)

ア 限度額  50万円
イ 利息  年29.2%
ウ 遅延損害金  年36.5%

取引2

平成10年6月8日~平成17年7月7日
平成10年6月8日付契約(基本契約2)

ア 限度額  50万円
イ 利息  年29.95%
ウ 遅延損害金  年39.5%

平成10年6月8日付契約書作成に際しての審査項目のうち、被上告人の融資希望額、勤務先、雇用形態、給与の支給形態、業種及び職種、住居の種類並びに家族の構成は、基本契約1を締結したときのものと同一であり、年収額及び他に利用中のローンの件数、金額についても大差はない状況でした。

判決は
「同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず、その後に、両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である(最高裁平成18年(受)第1187号同19年2月13日第三小法廷判決・民集61巻1号182頁、最高裁平成18年(受)第1887号同19年6月7日第一小法廷判決・民集61巻4号1537頁参照)。」

「そして、第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間、第1の基本契約についての契約書の返還の有無、借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無、第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況、第2の基本契約が締結されるに至る経緯、第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して、第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には、上記合意が存在するものと解するのが相当である。」
とし、「基本契約1に基づく最終の弁済から約3年間が経過した後に改めて基本契約2が締結されたこと、基本契約1と基本契約2は利息、遅延損害金の利率を異にすること。」から、上記特段の事情が存在すると解することはできない。」としました。

解説

第1の基本契約に基づく取引が完済により終了し過払金が発生したが、その後新たに第2の基本契約が締結されて借入が始まった場合、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、第2の基本契約に基づく取引に係る債務に充当されないのが原則だと、本判決は言っています。

ただ、「第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意(過払金充当合意)が存在するなど特段の事情」があれば、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されるとも言っています。

そして、上記6個(【要点】内1~6)の事情を考慮して、第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが「事実上1個の連続した貸付取引である」と評価することができるときには、上記過払金充当合意が存在するものと解するのが相当である、としました。

実際の訴訟では、①~⑥の事情のうち、①がもっとも重視され、次いで②③⑥がこれに次ぎます。④、⑤の立証は難しく、あまり争われることはありません。
取引の中断期間が1年以上あると、まず「事実上1個の連続した貸付取引」とは評価してもらえません。

この判決が出てしばらくは、ブランクが1年以上なら分断、1年未満なら一連といった運用がなされていましたが、最近は1年未満でも分断と解する裁判例が増えています。
さらに、第1取引完済時における契約書の返還(②)、第2取引開始時のカードの再発行(③)、利率の変更(⑥)等があると、1年未満の中断でも一連の貸付とは認めてもらえないことがあります。

最近は、業者から「第1取引が多額の一括返済により終了した」場合、取引終了の意思が明らかになったとして上記④の事情にあたるとか、第2基本契約の際に、借主が収入や生活状況を申告したことが上記⑤の事情に当たると主張される場合が多くなっており、こういった事情も重視する裁判官が増えています。

リボルビング払いを定める基本契約による借入が完済となり発生した過払金は、同基本契約のまま新しい貸金が発生すればそれに充当される

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