最高裁判決の要点と解説

リボルビング払いを定める基本契約による借入が完済となり発生した過払金は、同基本契約のまま新しい貸金が発生すればそれに充当される

平成19年6月7日最高裁判所第一小法廷判決

要点

カードキャッシングについて、同一基本契約の下で、完済・借入を繰り返す場合、完済によって生じた過払金は、将来発生する他の借入金債務に充当することができます。

判決

上告人は貸金業者、被上告人は借主です。

「上告人と被上告人との間で締結された本件各基本契約において、被上告人は借入限度額の範囲内において1万円単位で繰り返し上告人から金員を借り入れることができ、借入金の返済の方式は毎月一定の支払日に借主である被上告人の指定口座からの口座振替の方法によることとされ、毎月の返済額は前月における借入金債務の残額の合計を基準とする一定額に定められ、利息は前月の支払日の返済後の残元金の合計に対する当該支払日の翌日から当月の支払日までの期間に応じて計算することとされていたというのである。」

「これによれば、本件各基本契約に基づく債務の弁済は、各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく、本件各基本契約に基づく借入金の全体に対して行われるものと解されるのであり、充当の対象となるのはこのような全体としての借入金債務であると解することができる。そうすると、本件各基本契約は、同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、上記過払金を、弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより、弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。原審の前記判断は、これと同旨をいうものとして、是認することができる。」

解説

証書貸付の場合、貸付行為が最初の1回しかないため、その後の返済は全てその最初の1回に対して行われます。

しかし、リボルビング返済方式を定める基本契約の下、カードキャッシングが行われる場合は、返済は過去の貸付全体に対して行われ、個々の貸付に対して行われる訳ではありません。
とすれば、将来同基本契約に基づき発生する債務があれば、それに充当することが認められてもよさそうです。

実際、債務残高がゼロになっても、基本契約が存続する限りは、基本契約に基づき再度の借入が行われることも当然想定されます。
そう考えると、当該基本契約は、いったん完済した時点で存在する過払金を、将来的に発生する借入金債務に充当することも合意されていると考えるべきということになります。

この合意が過払金充当合意と呼ばれるものです。

上記の考え方からすると、一度完済して過払金が発生した場合、同基本契約が存続する限りは、同基本契約の下で発生する貸金債務の発生がどれだけ先のことであろうとも、前の取引で発生した過払金を新しく発生する貸金債務に充当できるようにも思われます。

実際、裁判所は、以前は同一基本契約内の貸付であれば、完済後3年経とうと、5年経とうと、場合によっては9年経とうとも、前の取引の過払金を新しい貸付金に充当することを認めてくれました。

しかし、平成26~27年ころからだいぶ裁判所の雰囲気が変わり、同一契約内の再貸付であっても、前の取引の完済後500日以上経つとなかなか過払金充当合意を認めてくれません。
中には1年を超えただけで過払金充当合意を否定する裁判官もいます。

過払金充当合意の存続に厳しい裁判官と、緩い裁判官がいますので、どっちの裁判官に当たるかで結論が分かれることになります。そのため、訴訟した場合の見通しがなかなかつきにくいのです。

証書貸付が長期間連続していた場合、過払金充当合意が成立しうる(株式会社エイワ)

代表弁護士中原俊明
中原 俊明法律事務所ホームワン 代表弁護士

東京都出身、1987年 弁護士登録(東京弁護士会所属)、ホームワンの代表弁護士 中原です。一件のご相談が、お客さまにとっては一生に一度きりのものだと知っています。お客様の信頼を得て、ご納得いただける解決の道を見つけたい。それがホームワンの願いです。法律事務所ホームワンでは過払い金・借金問題に関する相談を受け付けています。

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