最高裁判決の要点と解説

証書貸付が長期間連続していた場合、過払金充当合意が成立しうる(株式会社エイワ)

平成19年7月19日最高裁判所第一小法廷判決

要点

貸金業者エイワに関する判決です。

エイワは、カードキャッシングではなく、貸付は店舗で行い、その都度契約書を作成します。返済を半年ほど続けると、「借り入れの枠が空いたから」と言って、借換えを勧めてきます。
そうして何年も借り入れがずるずる続いていくのが普通です。

そうやって取引が続く中で、一度完済しても再度借入れが行われた場合、借れ入までの期間が数カ月程度であれば、その前後の取引を一個の貸付と考えて過払金を計算することができます。

判決

以下に上告人とあるのは貸金業者エイワ、Aは借主の事案です(被上告人は破産管財人)。

上告人は、昭和61年ころから平成16年4月5日までの間、Aに対して金銭貸借を続けていました。ただ履歴は平成5年10月25日以降のものしかないようです。
基本契約はないものの、上告人はAに貸付をして半年ほどすると借換えを勧めるため、借換の連続で貸付が続いていました。いずれの際も、Aが上告人の店頭に出向き、即時書面審査の上、追加貸付金が交付されていました。

Aは、平成15年4月2日にいったん完済しましたが、その約3か月後である同年7月17日には、従前の貸付けと同様の方法と貸付条件で貸付けを受け、平成16年1月6日、従前の貸付けと同様の借換えをし、その後同年4月5日まで元本及び利息の分割返済が重ねられたのですが、その後Aが破産し、したため破産管財人(被上告人)、上告人に過払金を返還するよう請求しました。

判決は「本件各貸付けは、平成15年7月17日の貸付けを除き、従前の貸付けの切替え及び貸増しとして、長年にわたり同様の方法で反復継続して行われていたものであり、同日の貸付けも、前回の返済から期間的に接着し、前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであるというのであるから、本件各貸付けを1個の連続した貸付取引であるとした原審の認定判断は相当である。そして、本件各貸付けのような1個の連続した貸付取引においては、当事者は、一つの貸付けを行う際に、切替え及び貸増しのための次の貸付けを行うことを想定しているのであり、複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らしても、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的である。上記のように、本件各貸付けが1個の連続した貸付取引である以上、本件各貸付けに係る上告人とAとの間の金銭消費貸借契約も、本件各貸付けに基づく借入金債務について制限超過部分を元本に充当し過払金が発生した場合には、当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。」として、約3か月のブランクがあるのに、全部の取引を一個の連続した貸付取引であると認めました。

解説

本判決の事案は、基本契約はないものの、平成5年10月25日から借換が繰り返され、平成15年4月2日いったん完済となりましたが、その約3か月後である同年7月17日に同様の取引が再開されたというものです。

本判決の事案の貸金業者は、貸付の際に一応証書貸付を行うものの、半年ほどすると「枠が空いたから借りませんか」と言ってきて、また証書で切替ないし貸し増しするというようなことを繰り返します。

最高裁は、各貸付の際、当事者も、それが完済されることは想定しておらず、当初から切替ないし貸し増しをすることを想定していることから、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的である、として本取引の途中には中3か月のブランク期間がありながら、このような一連計算を認めました。

基本契約なく、2本の証書貸付が有った場合、証書貸付間で過払金充当は生ぜず、分断となる

代表弁護士中原俊明
中原 俊明法律事務所ホームワン 代表弁護士

東京都出身、1987年 弁護士登録(東京弁護士会所属)、ホームワンの代表弁護士 中原です。一件のご相談が、お客さまにとっては一生に一度きりのものだと知っています。お客様の信頼を得て、ご納得いただける解決の道を見つけたい。それがホームワンの願いです。法律事務所ホームワンでは過払い金・借金問題に関する相談を受け付けています。

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