最高裁判決の要点と解説

旧クラヴィス顧客が、プロミスとの契約に切り替えた場合、プロミスはクラヴィスの過払金債務についても支払い義務を負う

平成23年9月30日最高裁判所第二小法廷判決

要点

クラヴィスは元はSMBCコンシューマーファイナンス(旧プロミス、以下「SMBC」といいます)の子会社でした。平成19年6月、SMBCは、子会社クラヴィスと、同社の貸金事業を引き継ぎ、クラヴィスの貸金業を清算させるという基本合意書を締結します。

SMBCはこの基本合意に基づき、顧客に対して「SMBCと契約し、SMBCからの借入金でクラヴィスからの借入金を完済するよう」勧誘するとともに、「クラヴィスとの紛争の交渉窓口をSMBCが引き受ける」ことを申し出、顧客は同申し出に異議はない旨を記載した書面をSMBC宛てに送付しました(こうした顧客を当事務所では「契約切替顧客」と呼んでいます)。

このことにより、SMBCによるクラヴィスの顧客に対する過払金債務の引受が確定しました。
その後、SMBCはクラヴィスとの間で、上記債務引受を合意解約しましたが、最高裁は、既に債務引受の効果が確定してしまっているため、SMBCは過払金債務を免れることはできないとしました。

判決

以下被上告人とはSMBCを指し、上告人は借主を指します。

「被上告人は、上記のような本件業務提携契約を前提として、クラヴィスの顧客であった上告人に対し、本件切替契約が被上告人のグループ会社の再編に伴うものであることや、本件取引1に係る紛争等の窓口が今後被上告人になることなどが記載された本件申込書を示して、被上告人との間で本件切替契約を締結することを勧誘しているのであるから、被上告人の意図は別にして、上記勧誘に当たって表示された被上告人の意思としては、これを合理的に解釈すれば、上告人が上記勧誘に応じた場合には、被上告人が、上告人とクラヴィスとの間で生じた債権を全て承継し、債務を全て引き受けることをその内容とするものとみるのが相当である。」

「そして、上告人は、上記の意思を表示した被上告人の勧誘に応じ、本件申込書に署名して被上告人に差し入れているのであるから、上告人もまた、クラヴィスとの間で生じた債権債務を被上告人が全てそのまま承継し、又は引き受けることを前提に、上記勧誘に応じ、本件切替契約を締結したものと解するのが合理的である。本件申込書には、クラヴィスに対して負担する債務を被上告人からの借入れにより完済する切替えについて承諾すること、本件取引1に係る約定残債務の額を確認し、これを完済するため、同額をクラヴィス名義の口座に振り込むことを依頼することも記載されているが、本件申込書は、上記勧誘に応じて差し入れられたものであり、実際にも、上告人が被上告人から借入金を受領して、これをもって自らクラヴィスに返済するという手続が執られることはなく、被上告人とその完全子会社であるクラヴィスとの間で直接送金手続が行われたにすぎない上に、上記の記載を本件申込書の他の記載部分と対照してみるならば、上告人は、本件取引1に基づく約定残債務に係るクラヴィスの債権を被上告人に承継させるための形式的な会計処理として、クラヴィスに対する約定残債務相当額を被上告人から借り入れ、その借入金をもって上記約定残債務相当額を弁済するという処理を行うことを承諾したにすぎないものと解される。以上の事情に照らせば、上告人と被上告人とは、本件切替契約の締結に当たり、被上告人が、上告人との関係において、本件取引1(顧客とクラヴィスとの間の取引)に係る債権を承継するにとどまらず、債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当であり、この債務には、過払金等返還債務も含まれていると解される。したがって、上告人が上記合意をしたことにより、論旨が指摘するような第三者のためにする契約の性質を有する本件債務引受条項について受益の意思表示もされていると解することができる。」

解説

例えばAがBとの契約で、Bが契約当事者でないCにあるモノを譲ることや、BがCにあるサービスをすることを約束する場合があります。これを「第三者のためにする契約」といいます。

その場合、ABが契約しただけでは、Cには何の権利も生じません。CがBに対し、そのモノがほしいとか、そのサービスを提供してくれ(これを「受益の意思表示」といいます)と求めた時点で、初めてCはBに対する権利を取得することができます(民法537条第2項)。

本件でいえば、SMBCはクラヴィスに対して同社の顧客に対する債務(当然過払金債務も含まれます)を引き受けることを約束し(第三者のためにする契約)、クラヴィスの顧客は、SMBCに対して、「紛争の窓口を引き受けること=過払金債務を引き受けること」に同意する、という形で「受益の意思表示」を行っているので、その段階でSMBCの同顧客に対する債務引受の効力が発生したことになるのです。

この後、SMBCはクラヴィスとの間で、債務引受の合意を解除するのですが、このときは既に旧クラヴィス顧客が「受益の意思表示」をしており、「債務引受の効果が確定」してしまっているため、SMBCは今さら過払金債務を免れることはできないのです。

この最高裁判決が出てからも、SMBCはしばらく、クラヴィスの過払金を請求されても応じず、判決になってようやく払ってくるということをしていましたが、最近ようやく裁判前の任意交渉でも支払いに応じるようになってきました。

廃業予定業者が他の業者に貸金を一括譲渡したとしても過払金債務は譲渡先に引き継がれない

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