最高裁判決の要点と解説

簡裁専属管轄合意ある場合も地裁への提訴することができ、簡裁への移送申立があっても地裁が自庁処理を相当と考えれば、却下することができる

平成20年7月18日最高裁判所第二小法廷決定

要点

基本契約上、簡裁にしか訴えることができないとされていても、過払金請求訴訟を地裁に提訴することができ、業者から地裁への移送を求める申立があっても、地裁は広く当該事件の事案の内容に照らして地裁で裁判することが相当と判断すれば、移送の申立てを却下できます。

判決

「地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され、被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合においても、当該訴訟を簡易裁判所に移送すべきか否かは、訴訟の著しい遅滞を避けるためや、当事者間の衡平を図るという観点(民訴法17条参照)からのみではなく、同法16条2項の規定の趣旨にかんがみ、広く当該事件の事案の内容に照らして地方裁判所における審理及び裁判が相当であるかどうかという観点から判断されるべきものであり、簡易裁判所への移送の申立てを却下する旨の判断は、自庁処理をする旨の判断と同じく、地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられており、裁量の逸脱、濫用と認められる特段の事情がある場合を除き、違法ということはできないというべきである。このことは、簡易裁判所の管轄が専属的管轄の合意によって生じた場合であっても異なるところはない(同法16条2項ただし書)。」

解説

法律上、訴訟の対象が140万円以上のときは地方裁判所、それ未満のときは簡易裁判所に、訴訟を提起することとされています。しかし、貸金業者の多くは、契約上「本店、支店(または借主)の住所を管轄する簡易裁判所」で裁判することと決めており、このような特約があれば、訴訟の対象が140万円以上の裁判も簡易裁判所ですることが認められます。

なぜ、貸金業者が地方裁判所ではなく、簡易裁判所で裁判をしたがるかというと、地方裁判所は弁護士を代理人に立てなければならないのに対し、簡易裁判所は従業員も裁判所の許可があれば法廷に立てるからです。要は弁護士費用の節約が目的です。

本件は664万3639円という多額の過払金訴訟を大阪地方裁判所に起こしたところ、業者が契約には「契約上、大阪簡易裁判所に専属的合意管轄がある」と主張して、大阪簡易裁判所に移送するよう申し立てました。

一審の大阪地裁は業者の移送申立てを却下しましたが、二審の大阪高裁は専属的合意管轄が簡裁にある以上、簡裁への移送申立てを却下できるのは「上記合意に基づく専属的管轄裁判所への移送を認めることにより訴訟の著しい遅滞を招いたり当事者間の衡平を害することになる事情があるときに限られ」るとして、大阪簡裁への移送を認めました。

これに対して最高裁は上記のように述べて、「簡易裁判所への移送の申立てを却下する旨の判断は、自庁処理をする旨の判断と同じく、地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられて」いるとして高裁の判断を否定しました。

参考条文

民事訴訟法 第16条

  1. 裁判所は、訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。
  2. 地方裁判所は、訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。ただし、訴訟がその簡易裁判所の専属管轄(当事者が第11条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合は、この限りでない。

民事訴訟法 第17条

第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる

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