最高裁判決の要点と解説

過払金請求及び受領行為が不法行為を構成するか

平成21年9月4日最高裁判所第二小法廷判決(平成21年(受)第47号)

要点

貸金業者が借主に対し、グレーゾーン金利による貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは、その貸金債権につき、その主張が事実に反していたり、法律的根拠を欠いていたことを知りながら、または、通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに、あえてその請求をしたなど、その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られます。

貸金業者が民法704条所定の悪意の受益者と推定されるときであっても、この結論は変わりません。

判決

本判決は、まず次の解釈論を述べます。
貸金業者の「借主に対し貸金の支払を請求し、借主から弁済を受ける行為」が「不法行為を構成するのは、上記請求ないし受領が暴行、脅迫等を伴うものであったり、貸金業者が当該貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながら、又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに、あえてその請求をしたりしたなど、その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られるものと解される。この理は、当該貸金業者が過払金の受領につき、民法704条所定の悪意の受益者であると推定される場合においても異なるところはない。」

本判決は、
当該事案において貸金業者の支払請求ないし上告人からの弁済金の受領が、「暴行、脅迫等を伴うものであったことはうかがわれず」、当時、みなし弁済を定めた貸金業法43条1項の「適用要件の解釈につき下級審裁判例の見解は分かれていて、当審の判断も示されていなかったことは当裁判所に顕著であって、このことからすると、被上告人が、上記過払金の発生以後、貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながら、又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのにあえてその請求をしたということもできず、その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠くものであったとはいえない。」
として、不法行為の成立を否定しました。

解説

704条は、「悪意の受益者」=自分に法律上権利がないことを知りながら金銭を受領していた者は不当利得した金銭に利息を付して返却しなければならないとしています。しかし、これは「悪意の受益者」を不法行為者としたものではありません。

例えば、ある人がリンゴの木を買ったが、その売買契約が無効だったとします。
買主が、売買が無効だと知っていて(悪意で)、収穫したリンゴを売って利益を得ていた場合、後日売主から請求された場合、リンゴの木だけ返して、リンゴを売ってもうけたお金を残すのは公平に反します。
そのため、民法190条は、悪意の買主は、リンゴの収益を売主に返すよう定めています。

無効な契約に基づいてお金を受け取った場合、その果実に当たるのは利息であり、704条は、公平の観点から、悪意で金銭を不当に利得したものは、その果実たる利息を返しなさいと言っているのです。
ですから、悪意の受益者だからといって、当然不法行為を行ったものとは言えません。

そもそも、平成18年1月13日の最高裁判決が出る前は、契約書とか領収証をきちんと交付していれば高い利息をとってもいいと考えられていましたし、じゃあどういう書面を交付していれば高い利息をとれるのかということについて、必ずしも統一的な見解があった訳ではありません。

そのため、最高裁は、不法行為が成立するのは「請求ないし受領が暴行、脅迫等を伴うものであったり、貸金業者が当該貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながら、又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに、あえてその請求をしたりしたなど、その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られる」としたのです。

判決文からすると、平成18年1月13日最高裁判決以降にグレーゾーン金利を請求することは、不法行為になるのではないか、とも解されそうですが、裁判実務上、そこまでは行っていません。

参考条文

民法190条

  • 1項
    悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
  • 2項
    前項の規定は、暴行若しくは脅迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。

特定調停時に発生している過払金は特定調停の清算条項によって消滅しない

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