最高裁判決の要点と解説

特定調停時に発生している過払金は特定調停の清算条項によって消滅しない

平成27年9月15日最高裁判所第三小法廷

要点

特定調停時に,特定債務者が過払金の有無を知らず,特定調停によって定められた支払いを行なった。その後,特定調停時にすでに過払金が発生していることを知って,過払金を請求した場合,特定調停手続は,債務者の負っている借金について調整するものであり,「債権債務なし」の清算条項によって,過払金の返還請求権を消滅させるようなものではない。

判決

本件調停は,特定調停手続において成立したものであるところ,特定調停手続は,支払不能に陥るおそれのある債務者等の経済的再生に資するため,債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進する事を目的とするものであり,特定債務者の有する金銭債権の有無やその内容を確定等することは当然に予定していないといえる。本件調停における調停の目的は,A取引のうち特定の期間内に被上告人がAから借り受けた借受金等の債務であると文言上明記され,本件調停の調停条項である本件確認条項及び本件清算条項も,上記調停の目的を前提とするものと言える。したがって,上記各条項の対象である被上告人とAとの間の権利義務関係も,特定債務者である被上告人のAに対する上記借受金等の債務に限られ,A取引によって生ずる被上告人のAに対する過払金返還請求権等の債権はこれに含まないと解するのが相当である。

解説

平成27年9月15日、最高裁第三小法廷で、過払金について判決が出ました。

この判決の事案は、すでに235万円近い過払金が出ていたのに、特定調停ではそのことが全く問題にされず、貸金債務約44万円を分割して支払う内容での調停が成立してしまったというものです。しかも「本件調停の調停条項に定めるほか,申立人と相手方との間には何らの債権債務のないことを相互に確認する」との清算条項が入っていました。

過払金債権者は、この清算条項は公序良俗に反し無効と主張し、業者はこの清算条項により、過払金も存在しないことが確定したから、支払い義務はないと反論しました。

最高裁は、同清算条項が公序良俗に反するとした点は否定しましたが、特定調停は、過重な債務が返済できなくて困っている人の借金を解決する制度であるから、そこで「債権債務なし」という条項があったとすれば、それは貸金債務のことであり、過払金債務のことを言っているはずがない、との理由で235万円の過払金はなお失われていないと判断しました。

もっとも、その後調停条項に基づいて分割で支払われた44万円は、一応「裁判所の調停」とお墨付きが出て支払われたものだから「法律上の原因なく」利益を得た物ではないとして、その分の過払金の請求は認められませんでした。

平成15、6年以降、特定調停でもこのような過払金を失わせかねない清算条項がつくことはなくなりましたし、それ以前の過払金は貸付停止により時効になっているでしょうから、その点での影響は限られるでしょう。

ただ、特定調停ではない私的和解については、新たな議論を呼びそうです。従来、裁判所は、清算条項付きの和解書面があるというだけで、簡単に請求棄却判決を書いてきましたが、今後こうした紋切り型の対応は許されないことになるかもしれません。

特定調停後の過払い金返還請求

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