自己破産するとできないこと

自己破産する前に、あらかじめ、自己破産するとできないこと、自己破産すると起こることについて把握しておきましょう。ここでは、それぞれについて説明した上で、自己破産しても影響がないこと、自己破産しても免除されないこと、自己破産の具体的な手続きについて説明します。

自己破産とはどういう手続き?

自己破産とは、減収や失業といった収入面や介護や離婚といった生活面の変化により、借金を返済できなくなってしまった方が裁判所に申立てを行なうことで、一定の価値のある財産を清算して、債権者に配当する手続きです。その後、裁判所から免責決定されたら、残りの借金が免除され、借金がゼロになります。

自己破産するとできないこと

自己破産しようか迷っている方の中には、自己破産するとできないことや制限されることについて知りたい方も多いと思います。ここでは、郵便物、職業、旅行や引っ越し、新たな借入について、それぞれ説明します。

郵便物はどうなる?

自己破産の申立を行ない、破産手続が開始されると、破産者宛の郵便物は破産管財人に転送され、その内容をチェックされます。これは、未申告の債権者がいないか、隠している財産はないかなどを破産管財人が調べるためです。

ちなみに、自己破産でも同時廃止手続という簡単な手続きで進めることができる場合、そもそも破産管財人がつかないため、郵便物の転送もありません。

職業は制限される?

破産手続中は、他人の財産にかかわる資格について、資格の制限(欠格事由)を受けることがあります。また、会社の取締役など、破産により委任契約が終了するものもあります。

破産手続き開始決定から復権までの間の資格制限一覧

旅行や引っ越しはできる?

破産開始決定後、裁判所の許可を得なければ、居住地から移動することができなくなります。そのため、旅行や引越しは、裁判所の許可がない限り、できなくなります。

新たな借入はできる?

信用情報機関に、自己破産をしたという記録(事故情報・異動情報)が、5~10年間は掲載され続けます。この記録が残っている間は、クレジットカードやローンなどを新たに契約することは難しくなります。

ブラックリストについて

自己破産すると起こること

自己破産するとできないことと合わせて、お金や住まい、車やバイクといった生活に関わる問題について、自己破産するとどうなるかについて知りたい方も多いと思います。ここでは、それぞれの問題について、詳しく説明します。

お金はどうなる?

99万円以下の現金は手元に残しておくことができます

管財事件で東京地方裁判所の場合

住まいはどうなる?

自己所有の不動産でなければ、そのまま住むことが出来ますが、自己所有の場合は、処分の対象になります。破産手続が始まるまでに時間もありますので、その間に転居費用を貯えるなど、転居の準備をしてください。どうしても住宅を残したい場合には、個人再生手続という選択肢もあります。

賃貸住宅にお住まいの場合はそのまま住むことが出来ます。2004(平成16)年の民法改正までは、賃借人が破産をすると賃貸人は、賃貸借契約の解約申し入れができると定められていました。しかし、この規定に対する批判が強かったことから当該規定は削除されています。そのため、破産したことにより家を出て行かなくてはならないということはありません。ただし、家賃滞納も破産手続に含めた場合は、滞納した家賃も免責になるので、その場合は出て行かざるを得ません。

自己破産後も新しく賃貸住宅を借りることは出来ます。自己破産した後に転居出来ないといった心配はありません。ただし、自己破産後5~10年は信用情報機関(CIC、JICC、全銀協)に破産した情報が登録されていますので、家賃の支払いをクレジット決済で行なう場合や、信販系の家賃保証会社を利用する場合は、審査が通らない可能性があります。

車やバイクはどうなる?

自己破産時に所有している車やバイクは、ローンの支払いが終わっている場合と、支払いが残っている場合とで、取り扱いが異なります。

ローンの支払いが終わっている場合には、自動車やバイクは原則として、資産とみなされますので、価値が20万円以上のものについては、処分し、債権者への弁済に充てられます。

ローンが残っている場合には、ローン会社との契約によりローンを完済するまでの間は、自動車やバイクの所有権がローン会社に留保されていることが通常です。そのような場合、自動車やバイクの時価に関わらず、ローン会社に自動車やバイクを引き揚げられてしまうのが原則です。

自己破産しても影響がないこと

ここまで自己破産するとできないことや自己破産すると起きることについて説明してきましたが、自己破産しても、自己破産前と変わらずにできることはたくさんあります。なかには誤解されていることもあり、自己破産することをためらう要因になっています。そうした誤解がないように、自己破産してもできることについて正確に知っておきましょう。

仕事はどうなる?

破産したからといって仕事を辞めなければならないということはなく、基本的に仕事はそのまま続けられます。上で説明したように、一定の資格を使う仕事は、手続期間中に就業制限がかかる場合もありますが、免責確定後は復権しますので、また同じように働くことができます。

給与はどうなる?

制限はありませんのでそのまま受け取れます。自己破産後(破産開始決定後)に得た財産は、「新得財産」といい、財産処分の対象にはなりません。

選挙権はどうなる?

選挙権がなくなることはありません。

住民票・戸籍はどうなる?

住民票や戸籍に載ることはありません。
かつては破産すると、その旨が本籍地の市町村役場に通知が行くことになっていました。本人以外には開示されませんが、地方の方だと知人が役場に勤めていることが多く、そのため破産を躊躇される方もいらっしゃいましたが、2005(平成17)年施行の破産法改正に伴う通達により、現在は破産したからといって、ただちに本籍地の役場に連絡が行くことはなく、免責が不許可になった場合のみその旨の通知が行くことになりました。

自己破産しても免除されないこと

自己破産しても、税金と養育費の支払いは免除されません。

税金を滞納している方が自己破産した場合、税金は非免責債権とされて支払い義務が免除されないため、破産手続後も支払いをする必要があります。税金の納付が難しい方は、早急に役所に支払いの相談に行かれることをおすすめします。

また、破産前に離婚していて養育費を支払っている場合、滞納している養育費や、将来の養育費について、自己破産しても支払い義務が免除されることはありません。

自己破産の2種類の手続き

自己破産の手続きは、大きく分けて「管財事件(かんざいじけん)」と「同時廃止事件(どうじはいしじけん)」の、いずれかの手続きに分かれます。ただし、管財事件については、通常管財と少額管財事件(裁判所によって名称が異なります)があり、東京地方裁判所の場合は、少額管財が主流です。そのため、ここでは、少額管財事件と同時廃止事件について説明します。

少額管財とは、裁判所によって選ばれた破産管財人(弁護士)が、財産の調査や処分(換価、現金化)を行い、債権者に分配する手続きです。破産手続きは、基本的には少額管財事件で進められます。
破産管財人は財産の調査のほか、免責の許可についての調査も行います。

対して、同時廃止とは、分配を必要とする財産がない、かつ借入の原因がやむを得ない理由(失業や減収による生活費補填など)だった場合に選ばれる手続きです。破産管財人が選任されないため、破産手続きの開始と同時に破産手続き廃止の決定がなされます。簡易的な手続きではありますが、あくまでも例外的な手続きです。
少額管財に比べて、手続きにかかる期間が短く、破産管財人が選任されないため、金銭的に出費が少なくすみます。

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