自己破産のデメリットとメリットを正しく理解する

自己破産のデメリット・誤解されている点を解説

借金を整理する場合、大きく分けて自己破産・個人再生・任意整理の3つの方法があります。
本来であれば最適な手続きをすべきですが、自己破産のデメリットの間違った情報だけで、「自己破産は考えていない」と検討から外す方が多くいらっしゃいます。しかし、そのイメージは正しいのでしょうか。例えば、選挙権がなくなるというのは本当なのでしょうか?

確かに自己破産には、一定期間、借り入れができなくなるなどのデメリットがあるのも確かです。しかし、債務が免除される、つまり借金がゼロになるという大きなメリットもあります。
ここでは、自己破産に関する間違った情報と本当のデメリット、そして、メリットについて詳しく解説します。ご自身の自己破産の情報が正しいかどうか確認していただき、何かわからないことがあれば、お気軽にご相談ください。

自己破産のよくある誤解

まずは自己破産のデメリットを正しく理解するために、デメリットとして誤解されている点をきちんと把握しましょう。

自己破産のよくある誤解(1)選挙権がなくなる?

選挙権は、満18歳以上の日本国民に与えられた権利であるため、自己破産したとしても、選挙権がなくなることはありませんので、ご安心ください。

自己破産のよくある誤解(2)年金は受け取れない?

公的年金は、差押え禁止債権となっているため、自己破産の手続中であっても、問題なく受け取れます。

自己破産のよくある誤解(3)戸籍や住民票に載ってしまう?

そもそも自己破産したとしても、住民票や戸籍に載ることはありません。
確かに、かつては本籍地の市町村が管理している「破産者名簿」というものがあり、破産すると、破産者名簿に登録されていた時代もありました。
しかし、平成17年の法改正により、現在では自己破産したとしても、手続きが問題なく終え、免責決定された場合、破産者名簿には記載されることはなくなりました。
ただし、免責不許可となった場合などは、破産者名簿に記載されることになります。

平成17年施行の破産法改正に伴う通達によって変更されました。

自己破産のよくある誤解(4)生活保護が受給できない?

過去に自己破産していると、生活保護が受けられないと思われる方がいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。生活保護は、健康で文化的な生活を保障するためのものであり、自己破産していても、生活をするために必要であれば生活保護を受給することができます。
また、生活保護受給中であっても、自己破産することは可能です。

自己破産のよくある誤解(5)過払い金が受け取れない?

破産申立前に回収した過払い金は、弁護士費用や免責されない税金の支払いに使うことができますし、99万円以下の現金であれば、原則として、そのまま現金として持つ事が可能です。ただし、過払い金の回収の時期や金額、申立のタイミングによっては、処分対象となるので注意が必要です。もしも借金を完済して、過払い金の対象となりそうな貸金業者がいる場合、必ず事前に申告するようにしてください。

自己破産のよくある誤解(6)会社を解雇される?

破産を理由に解雇されることは、基本的にはありません。勤務先に借入れをされていたり、官報をチェックする勤務先の場合ではない限り、破産をしたことが会社に伝わることはありません。ただし、デメリットの一つである手続き中に制限される資格や職種はありますので、注意が必要です。

自己破産のよくある誤解(7)海外に行けない?

破産をしたことによりパスポートに影響が出るわけではありませんので、海外に行くことは可能です。ただし、破産管財人が選任されている場合には、裁判所の事前許可が必要です。また、破産申立前に遊びのための旅行となると浪費と判断される可能性がありますので、事前に弁護士に相談するようにした方が無難です。

自己破産のよくある誤解(8)賃貸住宅の契約ができない?

破産をしたことにより賃貸住宅の契約ができなくなることはありませんが、デメリットの一つである信用情報に登録されることにより、保証会社の審査が通らず、結果、賃貸契約ができない可能性はあります。その場合は、連帯保証人のみの物件に変更したり、他の保証会社で審査してみる必要があります。

自己破産のデメリット

デメリットとして誤解されている点をおさえた上で、自己破産すると実際にどのようなデメリットがあるか見ていきましょう。

クレジットカードやローンを5年以上利用できなくなります

信用情報に、自己破産をしたという記録が、5~10年間は残ります。そのため、記録が残っている間は、クレジットカードやローンなどを新たに契約することは難しいです。

ブラックリストについて

財産を処分する必要があります

自己破産は、任意整理や個人再生と違い、支払義務を免除してもらう手続きです。支払義務を免除してもらう以上、めぼしい財産があれば処分する必要があります。

処分する必要がある財産(1)99万円を超える現金や20万円以上の資産価値があるもの

99万円を超える現金は処分する必要があります。また、資産価値が20万円をこえるもの(例えば、自動車やバイクなど)は原則として、資産とみなされますので、処分し、債権者への弁済に充てられます。価値が20万円に満たない場合は、処分の対象とはならず、そのまま保持することができます。また、家や土地などは処分対象になってしまいますが、家具・家電・衣類など、生活するため最低限必要とされるものは差押禁止財産として保護されます。

処分対象になる財産の例

  • 99万円を超える現金
  • 価値が20万円を超える資産
  • 家や土地など

処分する必要がある財産(2)商品をクレジット(立替金)契約してクレジットカード分割払いで購入したもの

車などのクレジット(立替金)契約で、の分割払いで購入したもので、まだ支払いが終わっていないものについては、価値に関わらず、原則、クレジット会社によって引揚されてしまいます。
これは、所有権留保といって、クレジットの支払いが終わるまでは、その物の所有者がクレジット会社になっているためです。なお、古い中古車や事故歴などあまりにも市場価値が低いような場合は、クレジット会社が所有権を放棄し、そのまま所有することができる場合もあります。

処分する必要がある財産(3)生命保険などの解約払戻金

生命保険などの保険についてはそのまま加入する事はできますが、解約返戻金(解約したときに戻ってくるお金)が資産とみなされます。解約返戻金が20万円以上の場合、自動車などと同様、処分対象となるため、解約後、解約返戻金を債権者への弁済に充てることになります。

なお、高齢や持病など特別な事情があり、解約すると今後保険に加入することが困難で、生活に支障を来たすような場合は、裁判所が保険の解約を免除してくれることもありますが、その場合、裁判所から解約返戻金と同額の金額を現金で積立することを求められます。

処分する必要がある財産(4)退職金

退職金は退職していない場合でも、その支給見込額の8分の1相当額が20万円以上の場合は、配当すべき財産とみなされます(20万円未満の場合は、手続上、財産としてみなされません)。

実務上では、勤続中に退職金の一部だけを勤務先から受け取る事は難しいので、自身の収入から毎月積み立てるなどして、8分の1相当額の現金を債権者への弁済に充てることになります。ただし、他の財産と合計して99万円までであれば、自由財産拡張の申立によって積立しなくてよい場合もあります。

手続中に制限される職業や資格があります

破産手続をし、破産開始決定により、人の財産にかかわる資格(弁護士・公認会計士・生命保険募集人・宅地建物取引主任者・警備員など)について手続中は資格を使用した仕事ができなくなります。
制限される職業や資格は、下の一覧にまとめているので、ご参考にしてください。

破産手続き開始決定から復権までの間の資格制限一覧

弁護士、司法修習生、検察審査員、弁理士、司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士、中小企業診断士、通関士、宅地建物取引主任者、旅行業務取扱主任者、公証人、簡易郵便局長、商工会の役員、証券取引外務員、商品投資販売業、証券業、投資顧問業、貸金業、割賦販売あっせん業者、質屋、生命保険募集人及び損害保険代理店、一般労働者派遣事業者、旅行業者、警備員、警備業者、建設業、建築士事務所開設者、風俗営業を営もうとする者、風俗営業の営業所管理者、一般廃棄物処理業者、卸売業者、調教師、騎手、代理人、後見人、後見監督人、保佐人、補助人、遺言執行者、 等

官報で公告されます

官報とは、国が発行している新聞のようなもので、法律が制定された場合などに、それを公告するものですが、自己破産手続を取ると、官報に、手続内容や名前・住所などが掲載されます。

ただし、お勤め先が定期的に官報をチェックしているような会社でない限り、一般の方がこれを見ることはまず無いと言えます。 現実的に、これによって自己破産手続を取ったことが他の方に知れてしまうという可能性は低いと言えるでしょう。

破産手続き中は管財人に郵便物が転送されます

自己破産の申立を行ない、破産開始決定されると、自己破産している方の郵便物は破産管財人に転送され、その内容をチェックされます。転送は、免責決定されるまで続きます。

ちなみに、同時廃止手続という、破産手続開始決定と同時に破産手続を廃止し、その後、免責手続だけを行うという簡単な手続きの場合、そもそも破産管財人がいないため、郵便物が転送されることはありません。

免責されないケースに注意

ここまでは自己破産手続きにともなうデメリットを説明してきましたが、そもそも免責されないものや免責されないケースがあることも注意しておきましょう。

税金は支払い義務が免除されません

税金は非免責債権といって、自己破産しても、支払い義務が免除(免責)されないため、その後も滞納している税金は支払をする必要があります。税金の他の非免責債権は以下のようなものなどがあてはまります。

免責されないもの参考一覧

  • 税金
  • 罰金、科料等
  • 横領などを行なった場合の賠償金等
  • 偏頗弁済(一部の債権者のみを優遇して返済する行為)
  • 夫婦間の協力・扶助義務等、一定の親族関係に係る請求権
  • 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為(悪質な交通事故など)に基づく損害賠償請求権
  • 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
  • 故意に債権者名簿に記載しなかった請求権

裁判所が免責許可決定しなければ、免責されません

浪費等の事実を隠すこと、偏頗(へんぱ)弁済(一部の債権者のみを優遇して返済する行為のことです)、財産の隠匿などの免責不許可事由がある場合、裁判所が選任する破産管財人が調査をし、裁判所が裁量で免責許可決定をしなければ、免責されません。

例えば、ギャンブルが原因で作ってしまった借金のように、借金をした理由のうち、免責できないものを「免責不許可事由」といいます。免責不許可事由として、主に以下のようなものが挙げられます。

主な免責不許可事由

  • ギャンブル(競馬、パチンコ等)
  • 換金行為(クレジットで商品を購入して、すぐに転売してしまうような行為)
  • 名義貸し(自分は借金する必要が無いのに、他人のためにカードを作って、それを使わせるような行為)
  • 株、先物取引
  • 財産の不当な処分、隠匿
  • 偏頗弁済(一部の債権者のみを優遇して返済する行為)
  • 虚偽の債権者一覧表の提出
  • 詐欺的借入れ

このような免責不許可事由があっても、真剣に手続きに取り組むのであれば、破産手続を管理する破産管財人の調査・判断の下「裁量免責」といって免責してくれています。
例えば、パチンコで借金を作ったという人も

  • 1) かつてどれだけパチンコをし、それが原因で借金を作ったのかを正直に申告し、
  • 2)現在はパチンコは一切やっておらず、
  • 3)借金に頼らない健全な家計を営んでいる

ということであれば免責してもらえるのがほとんどです。実際、免責が不許可になった案件は、財産を隠したり、裁判所への出頭期日を無断で欠席したりといった不誠実な場合がほとんどです。

自己破産のメリット

借金の支払い義務が免除されます

裁判所で支払いが不可能であると認められ、借金の支払い義務が免除(免責許可)されると、税金等一部の借金を除いてすべての借金を支払う必要がなくなります。

つまり、借金が0になるということです。当然、督促や取り立てもなくなります。借金が無くなることで、今後の生活の再建への道筋を考えることができ、借金の苦しみから解放され、人生をやり直すことができます。

一定の財産は手元に残すことができます

裁判所で定める基準を超えない財産(99万円以下の現金や20万円以下の預貯金など)は手元に残すことができます。

また、洗濯機や冷蔵庫といった家財道具まで処分されてしまうと、たとえ借金が免除されても、その後の生活が成り立たなくなってしまうので、原則として処分の対象外となっています。

なお、自分名義以外の財産は処分の対象にはなりません。例えば、妻名義で所有している自動車や、被保険者が本人で母が契約名義人になっているような生命保険等は、処分の対象にはなりません。

破産財団と自由財産

破産手続のうち、少額管財事件の場合、破産管財人(通常は弁護士です)が選任され、原則、破産者の一切の財産はこの破産管財人の管理下におかれます。この破産管財人の管理下におかれる財産を破産財団といい、破産管財人が専属的に、その管理及び処分をする権利を持つことになります。

破産管財人は、破産財団の中から換価出来る財産があれば、それを売却し、現金化出来た財産を債権者に分配します。

一方、原則的には、破産財団に一切の財産が含まれてしまいますが、そうならない財産もあり、これを自由財産といいます。例えば、生活に必要なお金なども、破産財団として破産管財人の管理下に置かれてしまうと、破産者が財産を処分する際に逐一破産管財人に許可を取らなくてはいかなくなり、日常生活に支障をきたすことが考えられるためです。
自由財産とされる範囲は、差押禁止財産(債務者の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品など)、99万円以下の現金、破産手続開始後に新たに取得した財産(新得財産)等です。

自由財産拡張とは?

本来破産財団として処分・換価の対象となる財産について、今後の経済的再生に必要不可欠な財産であれば、破産手続上、処分の対象とはせず、破産した後も保有出来るようにする制度です。

ただし、今後の経済的再生に必要不可欠であり、破産管財人の意見を聴取した上で、裁判所から認めてもらう必要があります(上限99万円)。自由財産拡張の申立てが認められれば下記のような財産については99万円(ただし合計額)まで継続保有できることがあります。

  • 預貯金
  • 生命保険解約返戻金
  • 自動車・居住用家屋の敷金債権
  • 電話加入権
  • 退職金の8分の1

また、稀に、生活上の著しい困窮を前提に社会的・一般的感覚としてやむを得ない状況の場合に、99万円を超えて自由財産拡張が認められるケースもあります。

自己破産のデメリット・誤解されている点を解説 まとめ

  • 自己破産のメリットは何ですか?
    借金の支払い義務が免除されることです。
  • 自己破産のデメリットは何ですか?
    財産を処分する必要があることやクレジットカードやローンを5年以上利用できなくなることなどです。
  • 自己破産しても、財産を残すことができますか?
    99万円以下の現金や20万円以下の預貯金など裁判所で定める基準を超えない財産は手元に残すことができます。

自己破産後の生活

代表弁護士 中原俊明 (東京弁護士会所属)
  • 1954年 東京都出身
  • 1978年 中央大学法学部卒業
  • 1987年 弁護士登録(登録番号:20255)
  • 2008年 法律事務所ホームワン開所

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