自己破産を裁判所に申し立てた後、裁判所から「破産手続開始の決定」が出ます。この決定は、かつて「破産宣告」と呼ばれていました。
「破産宣告」という言葉が過度にネガティブな印象を与えてしまうため、2005年の破産法改正によって「破産手続開始の決定」という表現に変更されました。
では、破産手続開始決定とはどういう意味なのでしょうか?破産手続開始決定の内容を正確に把握することで、手続きに対する印象も変わってくるかもしれません。このページでは、破産手続開始決定とは何か、破産手続開始決定の条件、破産手続開始決定後に起こること、加えて免責手続きについて、説明します。
自己破産は、「破産」という手続きと「免責」という手続きに分けられます。破産手続は、財産を換価(お金に換えること)して債権者に配当するという手続きです。それでも残ってしまった借金の支払う責任を免除してもらうのが、免責手続です。
破産手続開始決定とは、破産手続の開始を裁判所が認めることを意味します。
裁判所から破産手続の開始を認めてもらうには、以下の条件を満たす必要があります。これらの条件を満たしていないと、裁判所の破産手続開始決定を受けられず、自己破産することができません。
破産の要件は、支払不能であることです。支払不能というのは、文字どおり支払いができないという意味ですが、具体的には、その人の財産・収入をもってして借金の返済ができない状態を指します。借金の返済に十分な財産や収入がある場合は、支払不能とはいえないため、破産手続が認められません。
裁判所から破産手続開始決定を受けるには、裁判所に破産手続開始の申立てを行なわなくてはいけません。破産手続開始の申立てを行なうにあたっては、申立書、債権者一覧表、資産目録、陳述書、家計表その他裁判所が指定する必要書類を提出しなくてはいけません。
破産手続を申立後、裁判所に手続き費用を納めます。この費用を予納金と言います。
管財事件の場合、破産手続開始決定と同時に破産管財人が選任されます。破産管財人は、主に以下の業務を行ないます。
破産手続開始決定時点で保有している財産が、破産手続の対象となります。破産申立から破産手続開始決定まで(東京地裁の場合、約1〜2週間)に取得した新たな財産は、資産目録に記載されていなくとも、破産手続の対象となります。例えば、7月5日に破産手続を申立て、7月10日にボーナスが支給され、7月11日に破産手続開始決定が出たら、支給されたボーナスも金額によっては、一部が処分されることがあります。
一方で、破産手続開始決定後に取得した新たな財産は、破産手続の対象とはなりません。破産手続開始決定は、破産手続の対象となる財産が決まるタイミングのため、手続き上、最も重要なプロセスです。
破産手続開始決定後にどのようなことが起こるのか、不安な方もいらっしゃると思います。ここでは、具体的に破産手続開始決定後に起こることを説明します。
手続きの間、本人宛の郵便物は破産管財人に転送されます。これは、本人宛の郵便物を調べることで、未申告の債権者がいないか、未申告の財産がないか等を調査するために行なわれます。
裁判所の運用によりまちまちですが、管財人と面接する場合、一般的な面接の内容は以下の通りです。
破産手続開始決定を受けると、名前や住所が官報に掲載されます。官報とは、国が発行している新聞のようなもので、法律が制定された場合などに、それを公告するものです。
破産開始決定後、裁判所の許可を得なければ、居住地から移動することができなくなります。
破産開始決定後、人の財産にかかわる資格(弁護士・公認会計士・生命保険募集人・宅地建物取引主任者・警備員など)について手続き中は資格を使用した仕事ができなくなります。免責許可が確定すると資格制限は解除されます(復権)。
免責手続とは、借金を支払う義務を免除してもらう手続きです。破産手続で財産を処分して債権者に配当してから免責手続を取りますが、裁判所への申立ては破産手続きと同時に行います。裁判所が免責許可の決定をすることで、最終的に免責が認められます。
申立てと同時に裁判所から破産手続許可決定を受ける同時廃止事件と少額管財事件では手続き完了までの期間の目安が異なります。それぞれのケースに分けて、表をまとめています。
手続の種類 | 同時廃止事件 | 少額管財事件 |
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(1)依頼から申立まで | 3~6ヶ月 | |
(2)申立から破産手続開始決定まで | 即日※ | 約1〜2週間 |
(3)破産手続開始決定から免責決定まで | 約2ヶ月 | 2~3ヶ月 |
東京地方裁判所の場合。
弁護士費用を分割払いにしている場合は、基本的に全額入金後の申立となります。