自己破産をすると官報に掲載されることになりますが、官報を実際に見たことがないという方がほとんどだと思います。
そもそも官報とは何か?自己破産をした人のどんな情報が官報に掲載されるのかなど、解説していきます。
官報とは、国が発行している新聞のようなもので、法律や政令・条約を国民に知らせる役割を持っています。掲載される内容は、政府や各省庁の決定事項や人事異動、国家試験に関する事項や競争入札など国に関わる様々な情報が官報で公開されており、その中に、自己破産や個人再生のことも記載されます。官報は行政機関の休日を除いて毎日発行されています。
自己破産をすると、本人は債務を免除されますが、債権を回収できなかった債権者には多大な影響を及ぼします。
債権者である金融機関やクレジットカード会社にとっては「債務者が自己破産をした」ということは重要な情報です。
債権者への影響を考えて、自己破産の情報は官報に掲載されると言われています。
一度自己破産すると、信用情報に名前が載るため、その後、約5~10年間は基本的には新たにローンを組むことができません。また、自己破産後の7年間は、再度の自己破産での免責を許可されない(免責不許可事由)ため、官報に掲載されることで、国の公的な書類として記録し、公開する必要があります。
自己破産の場合、「破産手続の開始決定が出た後」と「免責許可決定が出た後」の2回官報に掲載されます。ただし、免責許可と手続きの廃止時期が異なる場合は、3回官報に掲載されることがあります。
自己破産手続を取ると、官報に手続内容や名前・住所などが掲載されます。上記の通り、基本的には2回官報に掲載されます。ここでは、官報に掲載されるそれぞれの内容について、 具体的な項目と内容を見ていきましょう。
なお、管財事件か同時廃止事件かによっても掲載される内容が異なります。
まずは、開始決定での内容を見ていきましょう。
【管財事件の場合】
項目 | 記載される内容 |
---|---|
事件番号 | 令和〇〇年(フ)第〇〇〇号 |
住所 | 住所が記載されます。 |
氏名 | 債務者 〇〇 〇〇(旧姓〇) |
決定年月日時 | 令和〇年〇月〇日午後〇時 |
主文 | 債務者について破産手続を開始する。 |
破産管財人 | 弁護士 〇〇 〇〇 |
破産債権の届出期間 | 令和〇年〇月〇日まで |
破産状況報告集会・一般調査・ 廃止意見聴取・計算報告・ 免責審尋の期日 | 令和〇年〇月〇日午前(午後)〇時〇分 |
免責意見申述期間 | 令和〇年〇月〇日まで |
裁判所名 | ○○裁判所○部(裁判所によって異なります) |
【同時廃止事件の場合】
項目 | 記載される内容 |
---|---|
事件番号 | 令和〇〇年(フ)第〇〇〇号 |
住所 | 住所が記載されます。 |
氏名 | 債務者 〇〇 〇〇(旧姓〇) |
決定年月日時 | 令和〇年〇月〇日午後〇時 |
主文 | 債務者について破産手続を開始する。 本件破産手続を廃止する。 |
理由の要旨 | 破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足する。 |
免責意見申述期間 | 令和〇年〇月〇日まで |
免責審尋期日 | 令和〇年〇月〇日午前(午後)〇時〇分 |
裁判所名 | ○○裁判所○部(裁判所によって異なります) |
続いて、免責決定時の掲載内容は下記の通りです。
【管財事件の場合】
項目 | 記載される内容 |
---|---|
事件番号 | 令和〇〇年(フ)第〇〇〇号 |
住所 | 住所が記載されます。 |
氏名 | 破産者 〇〇 〇〇(旧姓〇) |
決定年月日 | 令和〇年〇月〇日 |
主文 | 本件破産手続を廃止する。 |
理由の要旨 | 破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足する。 |
主文 | 破産者について免責を許可する。 |
裁判所名 | ○○裁判所○部(裁判所によって異なります) |
廃止決定と免責許可決定の日付が異なる場合は、まずは、廃止決定の内容が掲載され、その後、免責許可決定の内容が掲載されます。
【同時廃止事件の場合】
項目 | 記載される内容 |
---|---|
事件番号 | 令和〇〇年(フ)第〇〇〇号 |
住所 | 住所が記載されます。 |
氏名 | 破産者 〇〇 〇〇(旧姓〇) |
決定年月日 | 令和〇年〇月〇日 |
主文 | 破産者について免責を許可する。 |
裁判所名 | ○○裁判所○部(裁判所によって異なります) |
裁判所によって、掲載内容について異なる場合があります。
官報販売所や書店で購入できる他、図書館でも閲覧できます。またインターネットで直近30日分の官報が無料で閲覧することができ、それ以前の官報も有料で閲覧することができます。
インターネット版官報は以下のリンクよりご覧いただくことができます。
https://kanpou.npb.go.jp/
官報の号外のなかの公告というところに掲載されます。公告の諸事項には、裁判所の破産、免責、再生関係という項目があり、そちらに住所や氏名など具体的な内容が掲載されます。
官報を掲載すると、官報公告費がかかります。ホームワンでは、官報公告費は「申立時費用(実費)+事務手数料」の3万円に含まれます。自己破産の費用について、詳しくは以下のページをご覧ください。
下記に記した職業が官報をチェックしていると考えられます。
また、上記の職業以外に闇金業者がチェックしている可能性があります。
自己破産した人は、信用情報機関に登録されるため、しばらくの間、銀行や貸金業者からお金を借りることができなくなります。そのため、闇金業者は官報をチェックし、対象となる人に対し、高い金利でお金を貸して儲けようとしています。
自己破産をすると、資格制限を受ける職業があります。弁護士・公認会計士・生命保険募集人・宅地建物取引主任者・警備員など、人の財産にかかわる資格については、手続中は資格を使用した仕事ができなくなります。ただし、免責許可が確定すると資格制限は解除されます。資格制限を受ける職業の方については、官報に掲載されて周囲に知られる以前に、周囲にご自身の自己破産のことを説明しなくてはならないケースがあることに注意しましょう。
官報に掲載された破産者に関する情報を、Googleマップ上に転載する「破産者マップ」というサイトが現れました。しかし、個人情報保護委員会が「破産者マップ」に対して行政指導を行ない、その後、そのサイトは閉鎖されました。また、インターネット版官報には、利用に際し「営利を目的として利用する行為」「第三者の権利・利益を侵害する一切の行為」「法令に違反する行為」「検索ロボットやクローラ等によるデータ収集行為」「不正アクセスを試みる行為、その他サイトの運営を妨害する行為」を行わないよう注意が記載されています。
自己破産手続を取ると、官報に、手続内容や名前・住所などが掲載されますが、勤め先が定期的に官報をチェックしているような会社でない限り、一般の方がこれを見ることはまずないと言えます。
現実的に、官報に掲載されることによって自己破産手続を取ったことが他の方に知れてしまうという可能性は低いと言えるでしょう。
債務整理、特に破産事件を数多く取り扱ってきた。これまでに破産申立を行なった件数は6000件以上。依頼人の利益を考えることを第一に、法律サービスをもっと身近なものにしていくことを目指す。東京弁護士会春秋会の一員として編集に携わった書籍に『実践 訴訟戦術-弁護士はみんな悩んでいる-』などがある。
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