自己破産は自分でもできる?

自己破産は弁護士に依頼しないで自分だけでもできるのでしょうか。
結論から言うと、自己破産は自分でもできます。
ですが、自分で自己破産する場合には、デメリットやリスクも多くありますので、注意が必要です。

自分で自己破産をする方法

自己破産は、破産法という法律に基づいて裁判所で行なう手続きです。
破産法には、自己破産をするときには弁護士に依頼しなければならないという決まりはありませんので、自分だけでも自己破産をすることができます。

どこの裁判所で手続きをするのか

自己破産をするには、まず、どの裁判所で手続きをするのかを調べる必要があります。
自己破産は、自分が住んでいる住所地を管轄する地方裁判所で手続きをすることになります。これは裁判所のホームページで調べることができます。

裁判所ホームページ:各地の裁判所

裁判所に提出する申立書の作成や添付資料の収集

申立て先の裁判所が分かったら、次に、裁判所に提出する申立書を作成します。
一般的な申立書の書式は市販の書籍に掲載されていますし、弁護士会や裁判所のホームページに申立書のひな形を掲載しているところもあります。
書籍やホームページに掲載されている書式を参考にして、自分で申立書を作成することになります。

インターネットに公開されている申立書の書式の例

上記の例のとおり、裁判所ごとに申立書の書式が若干違うため、申立て前に裁判所に確認するとよいでしょう。
実際に弁護士が依頼を受けて自己破産の申立てをするときにも、事前に裁判所に確認を取ることがよくあります。

また、申立書には、記載内容の裏付け資料を添付する必要があります。
例えば次のような書類が必要になります。

  • 現在の住所を示すものとして住民票の写し
  • 収入状況を示すものとして源泉徴収票や給与明細の写し
  • 年金を受給されている場合には年金の受給証明書の写し
  • 預貯金の額を示すために銀行の通帳の写し
  • 不動産を所有している場合には不動産登記簿謄本(全部事項証明書)や不動産の価値を示すための査定書
  • 自動車を所有している場合には車検証や自動車の価値を示すための査定書
  • 保険を契約している場合には保険証券や解約返戻金額を示す書類

なお、ここで記載した書類で全部ではなく、他にも様々な書類が必要になります。
裁判所に申立てをする際には、自分の状況に応じた必要書類を不足なく集めて提出することになります。

裁判所ごとの運用の違いの確認

破産手続は、それぞれの地方の事情に応じて、裁判所ごとに手続きの進め方に細かい違いがあります。
特に東京・大阪・福岡といった大都市圏だと、大量の破産事件を効率よく処理するために様々なルールが定められています。
自分で自己破産をする場合には、自分が申立てをする裁判所のルールを把握しておくと手続きをスムーズに進めることができます。
裁判所によっては、手続きにあたっての注意事項をホームページに掲載しているところや、裁判所の窓口で配布しているところもあります。
これらの情報を確認してから自己破産の申立てをするのが望ましいでしょう。

裁判所や破産管財人からの指示の対応

裁判所に自己破産の申立書を提出しても、それで終わりではなく、そこからが手続きの本番です。
まずは裁判所で申立書のチェックを受け、不足する情報や書類について、追加での説明や提出を求められます。
また、破産管財人が選任されたら、破産管財人との面談(打合せ)を行ない、そこでも様々な指示が出されます。
破産管財人とは、裁判所から選ばれた弁護士で、裁判官と同じ中立の立場で、債権者と破産者の間に立って、破産手続の進行をする役割の人です。
裁判所や破産管財人からの指示は、いつまでに対応しなければならないという期限が決められていることが多いので、速やかに対応する必要があります。

自分で自己破産する場合のデメリットやリスク

自己破産の手続きの進め方の違い(管財手続、同時廃止手続)

自己破産の手続きの流れは、大きく分けて、破産管財人が選任されて調査を受ける管財手続と、破産管財人が選任されない同時廃止手続の2つがあります。

弁護士に依頼せず、自分で自己破産の申立てをすると、ほとんどのケースで破産管財人が選任されて調査を受けることになります。
弁護士に依頼せずに申立てをした場合、破産法をはじめとした法律の知識が不十分であると考えられるため、適正な手続きができているかの調査・監督のために破産管財人の選任がされるものです。 この場合、債務や資産の状況にもよりますが、破産管財人の費用として50万円以上の納付を求められることが通常です。

一方で、弁護士に依頼して自己破産をする場合、破産管財人が選任されない同時廃止手続が認められる可能性があるほか、破産管財人が選任されても少額管財手続(裁判所によって簡易管財手続など呼び方が異なる場合があります)という簡単な管財手続を利用することができます。
同時廃止手続ですと、破産管財人の費用がかかりませんので、破産にかかるトータルの費用は低くおさえられます。
また、東京地方裁判所の例では、少額管財手続の場合には管財費用は20万円で済みますので、自分で自己破産をする場合よりも管財費用を安くおさえることができます。
東京以外の裁判所でも、弁護士に依頼して破産の申立てをすると、通常より簡単かつ安価な管財手続を準備していることがほとんどです。
そのため、自分で自己破産をする費用面でのメリットは、あまり大きなものではないと言えます。

想定外の資産を失う可能性

自己破産は、自分の所有する財産を整理し、生活に必要な最低限の財産を残して、それ以外の財産を現金化して債権者に配る手続きです。
どこまでの財産を手元に残しておけるかは、法律で定められているほか、それぞれの裁判所ごとにも基準が定められています。
そのため、A地方裁判所では手元に残せる財産も、B地方裁判所では残すことができないというケースがあります。
また、借金をした理由との関係で、裁判所や破産管財人が手元の財産を処分するように求めることもあります。
自分で書籍やインターネットで調べた情報で手続きをしようとすると、自分が申立てをする裁判所の基準とは異なる情報に基づいて準備してしまい、想定外の財産を失うリスクがあります。
そういったケースでも、自由財産の範囲の拡張などの法律の手続きを踏むことで手元に財産を残すことができる場合もありますが、自分だけで対応するのは難しいことが多いと思われます。

免責が認められないリスク

自己破産をする最大の目的は、借金(債務)の支払を免除してもらう免責を認めてもらうことにあります。
現在の裁判所の運用では、自己破産をしたが免責が認められないというケースは非常に稀で、ほとんどのケースで免責が認められています。
しかしながら、免責が認められないケースが少ないながらも存在することは事実です。

また、破産法には、破産手続中にしてはいけないことがいくつも定められており、それに違反した場合にも、免責が認められない可能性があります。
よくあるのが、銀行や消費者金融などからの借入は自己破産で申告したが、友人など個人間での貸し借りは申告せずに返済を続けていたというような、債権者を不平等に扱っていたというケースです。
自己破産をするのであれば、債権者は平等に扱わなければならず、特定の債権者だけ有利な扱いをすることは認められません。
自分で自己破産をするのであれば、何をしてはいけないのかなどをしっかりと自分で調べて理解しておく必要があります。

そもそも自己破産ができない・選べない可能性もある

自己破産は希望したら必ずできるというものではなく、自己破産が認められるためには破産法の要件をみたしている必要があります。
世間一般で言われている「破産」と、法律上の「破産」は、少しイメージが違うところもあります。

誤解しがちなポイントとしては、借金を返せない(支払不能)ということの意味です。
自己破産をする場合、極端に言うと、自分の財産を全部売却して返済にあてて、毎月の給料も最優先で返済にまわして、家計をギリギリまで切り詰めて生活をして、それでも返せないのかどうかを考えることになります。
手元にある現金や預貯金からは借金が返せなくても、人の財産は現金・預貯金に限られません。自己破産をするときには、現金・預貯金のほかにも、不動産や自動車、保険、積立金、退職金、出資金、有価証券(株式)、敷金、相続した財産など、現金化できる財産はすべて現金化して債権者に配るのが原則となります。
もちろん、生活に必要な最低限の財産は手元に残せますが、それを超える財産は現金化して返済にあてることになるのです。
資産をひとつずつ整理していくと、実は財産が多くあることが判明して、破産を選べないというケースは少なからずあります。

自己破産をすることでの影響について見落としがちなのが、相続をしたけれども名義変更をしていない財産や、保証人がついている借入です。
名義変更をしていなくても自分の財産であれば処分の対象になりますし、保証人がついている借入は、破産をすると保証人に請求が行きます。
自己破産をした場合に、誰にどこまでの影響が出るのかを把握しておかないと、そもそも自己破産を選ぶべきでなかったと後悔するのもあり得ることです。

また、裁判所は、債権者との間で中立の立場にありますから、単に返済したくないから自己破産を希望しているのではないかという視点からもチェックを受けます。
収入状況と債務状況からみて、ちゃんと家計を切り詰めれば、返済をしても生活を送ることが十分にできるとみられてしまうと、自己破産を認めてもらえないということもあります。
厳しい裁判官だと、自己破産をしないで返済をしていくことは考えなかったのか、数字を示して説明をすることを求められる場合もあります。

自己破産を弁護士に依頼した場合のメリット

債権者とのやり取りを弁護士に任せられる

自己破産を決意したとしても、それだけでは債権者からの督促は止まりません。 自分から債権者に「破産します」と伝えても、実際に裁判所で破産手続が始まるまでは、債権者としても督促を止めるわけにはいかないでしょう。

弁護士に自己破産を依頼した場合、依頼を受けた弁護士は、まず、債権者に受任通知を送ります。
受任通知は、依頼者が多額の借金を抱えて支払困難な状況にあり、このあと依頼を受けた弁護士が破産手続を進めるということを債権者に知らせるものです。
受任通知を受けた債権者は、貸金業法などの法律の規制により、弁護士に依頼をした債務者に直接の取立行為をしてはいけないとされています。
そのため、債権者からの督促が止まり、今後の債権者の対応は弁護士に任せることができます。

また、債権者が支払いを求めて裁判をしてくることもありますが、弁護士に依頼していれば、その裁判の対応も任せることができます。

必要な書類をピンポイントに教えてもらえる

自己破産をする場合、裁判所に多くの書類を提出しなければなりません。
それも全員に共通するものは住民票など一部の書類だけで、それ以外の書類は、それぞれの人の状況に応じて必要になるものがほとんどです。
弁護士に依頼すると、こういう場合にはこういう資料が必要なので提出をしてくださいとピンポイントに教えてもらうことができるので、どういった書類を集めればよいのか調べたり悩んだりする必要がなくなります。

申立書の作成を任せることができる

弁護士に依頼すると、申立書は弁護士が作成しますので、自分で申立書を作成する必要がなくなります。
ただし、自分自身の状況など、他人には分からない事情は自分で説明する必要がありますので、本当に全部を丸投げできるわけではありません。

自己破産での注意点や今後の見通しの説明を受けられる

自己破産をするにあたり、してはいけないことや、気をつけなければならないことなどの注意点は多くあります。
もしも駄目なことをしてしまうと、あとで裁判官や破産管財人から厳しく追及を受けることになり、最悪の場合には免責が認められない可能性もあります。
自分で自己破産をするのであれば、市販の書籍などを読んで、注意点をよく確認しなければなりませんが、弁護士に依頼すると、それぞれの状況に応じて注意しなければならないことの説明を受けられます。

また、自己破産は、今日始めて明日終わるというような簡単な手続きではなく、最短でも数か月から、事情によっては1年を超える場合もあるなど、ある程度の長い時間がかかるものです。
弁護士に依頼すると、今後の手続きの見通しの説明を受けられるので、いつ自分は借金から解放されるのだろうかという不安を解消することができます。

裁判所や破産管財人とのやり取りを任せられる

自分で自己破産をする場合、裁判所や破産管財人とも自分でやり取りをしなければなりません。
裁判所も破産管財人も、債権者との間で中立の立場で職務を行なうものですから、自己破産する人の利益を最優先に考えてくれるわけではないことに注意が必要です。
もし何か困ったことがあっても、立場上、破産者に有利になるようなアドバイスはすることができないと言われることもあるかもしれません。

一方で、弁護士に依頼して破産をする場合、裁判所や破産管財人とのやり取りは、依頼を受けた弁護士が行なうことになります。
ただし、破産者本人に直接連絡を取りながら業務を進める破産管財人も多いため、絶対に自分に直接連絡がこないというわけではありません。
そういう破産管財人の場合、破産管財人からきた連絡を弁護士と共有しながら手続きを進めていくことになります。
弁護士は依頼者の利益を最優先に考えますから、破産手続をうまく進めるためにはこうしたほうがよいとアドバイスを受けながら進めることができます。

まとめ

自己破産は自分でもすることができますが、デメリットやリスクもあります。
弁護士に依頼せずに自分で自己破産をしようとすると、自己破産の準備をしている間も返済を求めて強硬な督促をしてくる債権者と自分でやり取りをしなければならず、自己破産の手続き中も法律のプロである裁判官や破産管財人と自分でやり取りをしなければならないわけですから、相当な覚悟と知識が求められます。
そのうえで、破産管財人の費用を考えると、自分で自己破産をすることで弁護士費用の支払いをしないで済んだとしても、経済的なメリットはさほど大きなものではありません。

自己破産は、借金を返さなくてよくなるという点で、破産をする人には利益がありますが、一方で、返済を受けられない債権者は多大な被害を受けることになります。
そのため、自己破産をするには、破産法に基づいて、裁判所での厳格かつ適正な手続きが必要になります。
それには、破産法をはじめとした法律の知識が必要となります。法律の知識がないからとか、初めてで不慣れだからというような理由で適当な手続きをすることは、被害を受ける債権者の立場からは認められないものでしょう。
法律の専門家である弁護士に手続きを依頼することで、自己破産をするにあたっての負担を大幅に軽減することができます。
もし返済が厳しくて自己破産を考えることがあれば、まずは弁護士にご相談ください。

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