過払い金の知識
過払い金を請求すると、貸金業者が、「取引途中で貸付停止措置がされているから10年以上前の過払い金については時効が成立している」と主張してくることがあります。この主張が認められると、過払い金が大きく減額されることが多いため、なんとしても避けたいところですが、どのように対応すればよいのでしょうか?ここでは、貸付停止措置が過払い金請求に与える影響と、対応方法について解説します。
過払い金は過去に払い過ぎた金額が積み重なったものであり、最後の取引から10年で時効になります。借入時点から10年ではないため、借入と返済を繰り返していれば、時効にならないまま過払い金は積み重なっていきます。そのため、古くから借入をしている場合、30年、40年分の過払い金を請求することもあり、金額が数百万円、さらには1000万円を超える場合もあるのです。
過払い金は10年で時効になるため、完済後10年経っている場合、過払い金は請求できません。しかし、業者は、10年以上前に業者から貸付を停止されてしまっている場合、10年以上前に発生した過払い金は全て時効になってしまうと主張してきます。この主張が通ってしまうと過去10年間に発生した過払い金しか請求できないことになります。この主張の根拠は、非常に分かりにくいですが、以下順を追って説明します。
以下のようなことがあると、貸金業者により貸付が止められてしまうことがあります。
過払い金は10年で時効になりますが、「いつの時点」から10年経つと時効になるのかが、従来から争われており、この10年の時効期間がスタートする時点が、時効の「起算点」と言われるものです。
時効の起算点を「過払い金が発生した時点」とすると、前にも話したような30年前、40年前の過払い金は請求できないことになってしまいます。それが実際に請求できているのは、ある最高裁判決が時効の起算点を「取引終了時点」としているからです。
最高裁は、その理由を「まだ借入ができる状態にある限り、借主が過払い金の返還を請求することは通常想定されておらず、借主は新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点で過払い金の返還を請求することとし、それまでは過払い金が発生してもその都度その返還を請求することはしないのが通常である。」と述べています。
この最高裁判決は2009(平成21)年1月22日に出ましたが、しばらくは「取引終了時点=完済時点」と考えられていました。 しかし、最高裁が、取引終了時点を起算点とする理由を「新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点」で過払い金請求をするのが普通だからと述べていることから、貸金業者は、完済する以前に業者から貸付を停止された場合はその時点で「新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった」といえ、「貸付停止後10年」で時効となるという、前述した主張をするようになったのです。
最高裁は、この貸付停止についてまだ判決を出していないため、裁判所の判断は次のように分かれています。
A. 業者が貸付停止した場合、常に貸付停止時点が起算点となる。
B. 業者が貸付停止をしても、借主がそのことを知らない限り、貸付停止時点が起算点となることはない。
おおまかな傾向で言えば、Bと考える裁判官が多いと言えますが、Aと考える裁判官も相当程度います。貸付停止が争点となっているケースで裁判した場合、どちらの裁判官に当たるかによって、結論が分かれるため、過払金の一部が時効になるかどうかは運次第ということになります。
Bの判断ように「業者が貸付停止をしても、借主がそのことを知らない限り、貸付停止時点が起算点となることはない」としても、どのような場合に「借主がそのことを知った」といえるかが問題です。
通常、貸付停止があると、ATMのモニター上、「借入」のボタンが消えたり、融資可能額に0円の表示が出るようになったり、利用明細の融資可能額の記載がなくなったり、と様々な変化があります。こうした表示があることで「貸付停止を知ったはずだから、時効起算点と考えていい」と考える裁判官と、「貸付停止の理由も知らされず、それが一時的なものかどうかも分からない以上、将来の借入れを期待しうる状況にあると言え、時効起算点とはなりえない」と考える裁判官がいます。
ただ、業者が借主との電話でのやり取りで、貸付停止を伝えたような場合、貸金業法上「交渉経過記録」にその旨記載することが義務付けられているため、こういった記録が業者から証拠で出されます。ただ、そういった場合「当社規定により融資不可と伝える」等、簡単な記述で終わっているのが普通です。そのため、「この程度の記載では貸付停止が確定的なものとして伝えられたか不明」と考え、時効起算点とはならないと考える裁判官もいれば、「明確な記載はないが、当然貸付停止が一時的なものではなく、確定的なものであるとの説明があったと解するのが普通」と考え、時効起算点となると考える裁判官もいます。後者のように考える裁判官の方が多数です。
「督促ないしは信用調査のために業者が借主の勤務先に電話したら、既に退職していることを知らされた」ことを理由に、貸付停止とされる場合がよくあります。そうした場合「勤務先が変わったのにそれを知らせなかったのは契約違反だから貸付停止は確定的なものである筈」と考えて、その時点が時効起算点となると考える裁判官も要れば、「その後就職先が判明すれば、貸付を再開する可能性もあるだろう」と考えて時効起算点とはならないと考える裁判官もいますが、前者のように考える裁判官のほうが多数です。
貸付停止により10年間の時効期間が既にスタートしている場合、過払い金を請求しないと、古い過払い金がどんどん時効にかかって消えていくため、できるだけ早く請求することが必要です。大手貸金業者は2008(平成20)年前後から融資基準を厳しくし、貸付を止めているケースが多いため、多くの人が貸付停止を主張されています。
特に業者の店舗のATMを利用して返済をしていた場合、銀行等のATMで返済していた場合と異なり、モニター画面、利用明細で、融資可能額の記載等の記録が残りやすく、それらを根拠に業者も貸付停止を強く主張してくる傾向があります。
ただ、完済している人はともかく、まだ返済中だという人は、過払い金を請求することにためらいもあって、完済してから請求しようと考えている場合が多いでしょう。しかし、貸付停止が過去になされている場合、完済するまでに、日々過払い金が減っていってしまいます。
そうした場合、過払い金があるかどうかの調査だけを弁護士に依頼することもぜひ検討ください。調査するだけなら、いわゆるブラックリストの対象となりません。調査の結果、過払い金が出ることが確実なことが分かった場合は、表面上はまだ債務が残っていても、実際は債務がないため、ブラックリストの対象となりません。そのため、すぐにも過払い金を請求することをお勧めします。
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