平成18年1月13日最高裁判所第二小法廷判決

期限の利益喪失約款があれば、みなし弁済は成立しない。貸金業法施行規則第15条2項は違法。

【要点】

この判決こそが「シティズ判決」と呼ばれるものです。

シティズ(現在はアイフルに吸収合併)という業者は、法律の定める要件もきちんと漏れなく書いた契約書面、領収書面を、法律の定める期限内に交付することで、過払金請求訴訟でも、数多くの勝訴判決を獲得し、その成果をホームページ上の「シティズ判決集」というページで誇らしげに示していました。

しかし、この判決でシティズは敗訴し、法律通り書面の交付をどれだけ厳格にしていようとも、期限の利益喪失約款が契約書の中に入っていれば、過払金請求は免れないことになりました。〈判旨1〉

この判決が出たことで、過払金請求を激増させ、武富士ほか多くの消費者金融を経営破たんにまで追い込んだのですから、まさに画期的な判決といえるでしょう。

契約書面、領収書面には、貸金業法17条、18条が定める事項が全て記載されていかないとなりません。しかし、財務省はATMの利用明細にそれらを全部書かなくても、利用明細に基本契約書の契約番号を書き、記載が足りない分も基本契約書に書かれていれば、要件は全部クリアしているものとみなすということを規則でうたっていました。
財務省は、客は明細と基本契約書の双方を照らし合わせてみれば、法定事項は全部分かるのだから、法律に反しないだろうという理解だったのですが、最高裁はそのようなことは違法であり、財務省の作った規則自体が法解釈を誤っているとしました。〈判旨2〉

この点でも画期的な判決でした。

期限の利益喪失約款とは「支払期日までに返済できなかった場合は貸金を一括請求する」とする規定のことをいいます。

【判決】

貸金業法第43条1項は、貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき、債務者が利息として支払った金銭の額が、利息の制限額を超える場合において、貸金業者が、貸金業に係る業務規制として定められた法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守しているときには、その支払が任意に行われた場合に限って、例外的に、利息制限法1条1項の規定にかかわらず、制限超過部分の支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めています。

〈判旨1〉
期限の利益喪失約款の下なされた超過利息の支払いは、任意になされたものとはいえず、有効な利息の支払いとはみなされない。

「貸金業者の業務の適正な運営を確保し、資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨、目的(法1条)等にかんがみると、法43条1項の規定の適用要件については、これを厳格に解釈すべきである(…同16年2月20日第二小法廷判決…同16年2月20日第二小法廷判決…参照)。」

「債務者が、事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には、制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず、法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。」

そして、最高裁は、本件期限の利益喪失特約は、超過利息を支払わない場合にも期限の利益を喪失させるため、その部分に限り一部無効であって、
「制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども、この特約の存在は、通常、債務者に対し、支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り、期限の利益を喪失し、残元本全額を直ちに一括して支払い、これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え、その結果、このような不利益を回避するために、制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。」とし、
「上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。」として、43条第1項のみなし弁済の規定は適用とならず、債務者は過払金を請求できるとしました。

〈判旨2〉
最高裁は、「法18条1項が、貸金業者は、貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは、同項各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない旨を定めているのは、貸金業者の業務の適正な運営を確保し、資金需要者等の利益の保護を図るためであるから、同項の解釈にあたっては、文理を離れて緩やかな解釈をすることは許されない」とし、
「上記内閣府令に該当する施行規則15条2項のうち、当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって、法18条1項1号から3号までに掲げる事項の記載に代えることができる旨定めた部分は、他の事項の記載をもって法定事項の一部の記載に代えることを定めたものであるから、内閣府令に対する法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。」としました。

【解説】

〈判旨1〉
期限の利益喪失約款の下なされた超過利息の支払いは、任意になされたものとはいえず、有効な利息の支払いとはみなされない。

この判決を理解するには、貸金業法43条第1項を見ることから始めることが必要です。

本来利息制限法に違反する利息の支払いは「無効」なのですが、貸金業法第43条第1項は、
①法律の定めた事項を漏れなく書いた契約書面(17条書面)、領収書面(18条書面)を、法律の定める期限内に交付しており、②債務者が利息として任意に(超過利息を)支払っていれば、「有効」な利息の債務の弁済とみなす」としました。

法律の条件を守っていれば、高利をとってもよいと国がお墨付きを与えていたのです。

この「有効な利息の債務の弁済とみなす」という文言から「みなし弁済」という用語が生まれ、みなし弁済が認められなければ過払金を請求できるが、みなし弁済が認められてしまうと過払金を請求できないという言い方もされるようになりました。

このシティズ判決が出るまでは、みなし弁済の成否は、業者の交付する契約書面、領収書面(ATM含む)が、法律の要件を満たしているか、契約書面が契約後速やかに、領収書面が領収後直ちに交付されているかによって決せられていました。

また、みなし弁済が成立するためのもう一つの要件「債務者が利息として任意に支払った」かどうかは、ほとんど問題にされることがありませんでした。それは17条書面、18条書面には、利率、利息の額が書かれている以上、それを見れば「約定利息が、利息制限法上限金利を超えていること」は誰でも分かるし、その上で上限金利を超える利息を支払っているのだから「任意」で支払っていることになる、というのが一般的な理解だったからです。

しかし、最高裁は今まで注目もされていなかった、この「任意」の要件を取り上げました。

借主は利息制限法上限金利を超える利息だと知って払ってはいるが、そうしないと、期限の利益を喪失したと言われて一括請求を受けるから、超過利息を強制的に払わされている。仮に利息制限法違反で無効な利息だと分かっていても、払わなければ一括請求されるとの誤解のもと、超過利息も払っているのであり、これを「任意」の支払いとはいえず、43条1項の適用はない、としたのです。

〈判旨2〉
18条が定める記載事項は、利用明細に全て記載されている必要がある。契約番号その他により明示することをもって、法18条法定事項の記載に代えることができる旨定めた施行規則15条2項は違法である。

貸金業法第43条第1項の規定は、貸金業者が、法律の定める書面を、法律の定める時期に交付していれば、超過利息も有効な利息の弁済とみなすという例外を定めたものですが、これは「貸金業者の業務の適正な運営を確保し、資金需要者等の利益の保護を図るため」の規定です。

裁判所は、定期借家権における法定説明書面や、特定商取引法の法定書面等、消費者保護のために業者が発行する書面の解釈については、非常に厳格に解釈する傾向があります。

この判決が出た後も、最高裁は、貸金業法第17条6号の定める「返済期間及び返済回数」、施行規則第13条第1項第1号チの「各回の返済金額」について厳格な解釈をしています(平成17年12月15日最高裁第一小法廷判決)。

【参考条文】

貸金業法 第43条第1項

貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法(昭和29年法律第100号)第3条の規定により利息とみなされるものを含む。)の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払った金銭の額が、同法第1条第1項に定める利息の制限額を超える場合において、その支払いが次の各号に該当するときは、当該超過部分の支払いは同項の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなす。

  • 第17条第1項または第2項(第24条第2項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第17条第1項または第2項に規定する書面を交付している場合におけるその交付をしている者に対する貸付の契約に基づく支払い
  • 第18条第1項(第24条第2項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第18条第1項に規定する書面を交付した場合における同項の弁済にかかる支払

過払い金について、お気軽にご相談ください。

お電話からの無料相談

WEBからの無料相談 0120-316-279