ここでは、個人再生で提出する再生計画案の書面決議における反対について、詳しく解説します。あわせて、反対される見込みがある場合の対処法についても説明します。
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類がありますが、基本的に債務者にとって利益がある小規模個人再生を前提に進めます。ただし、小規模個人再生は、再生計画案を決議する必要があり、債権者の頭数の半数以上もしくは債権額の過半数の債権者が反対すると手続きが廃止になるので注意が必要です。
小規模個人再生の法律上の要件は「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること」となっています。自営業を営んでいる方であれ、サラリーマンや年金生活者の方であれ、原則としてこの要件を満たせば小規模個人再生の利用が可能です。
給与所得者等再生は、一般のサラリーマンなど将来の収入を確実かつ容易に把握できる人を対象にしている手続きです。また、債権者の決議を再生計画の認可要件から省略するなど、小規模個人再生と比べて簡素な手続きとなっており、小規模個人再生の特則的な位置付けとなっています。ただし、サラリーマンが個人再生を行なうときは必ず給与所得者等再生をしなければならないということではありません。
また、上述のように、小規模個人再生では、債権者の頭数の半数以上もしくは債権額の過半数の債権者が反対すると手続きが廃止されますが、給与所得者等再生では、再生計画案を決議する必要がなく、要件を満たしていれば、裁判所から認可決定を受けることができます。
小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | |
---|---|---|
要件 | 継続的に又は反復して収入を得る見込みのある者。 | 給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で、その額の変動の幅が少ないと見込まれること。 |
債権者の同意(反対がないこと) | 必要(債権者の頭数の半数以上が反対せず、かつ、債権額の過半数の債権者が反対しないこと) | 不要 |
再生計画案を提出すると、裁判所は、書面決議に付する旨の決定を下します。裁判所は、債権者に対し、再生計画案に反対(不同意)する場合は、裁判所の定める期間内で、不同意である旨、回答するよう記載した書面を送付します。
債権者が、個人再生の書面決議で反対する理由としては「会社の方針として反対する」「債権額の過半数を持っているから反対する」などが挙げられます。
個人再生で反対する債権者には「一部の金融業者」「公的金融機関や信用保証協会」「個人の債権者」がいます。
一部の金融業者は、会社の方針として個人再生に反対するところがあります。
公的金融機関や信用保証協会は、審査の結果によって、反対することがあります。ただし、最近は反対しない傾向が見られています。
友人や親類などの債権者には、債務者に対して感情的になり、反対する方もいます。
債権者の頭数の半数以上もしくは債権額の過半数の債権者が反対すると手続きが廃止となります。例えば、債権者がA〜E社の5社であり、債権額の総額が400万円であるケースで、各社の債権額が次のような場合を考えてみましょう。
会社名 | 債権額 |
---|---|
A社 | 50万円 |
B社 | 100万円 |
C社 | 180万円 |
D社 | 30万円 |
E社 | 40万円 |
合計 | 400万円 |
債権者の頭数の半数以上が反対すると、廃止となります。債権者がA〜E社の5社である場合、債権者5社のうち3社以上が反対すると、再生手続が廃止となります。債権者が6社の場合、2社の反対であれば成立しますが、3社の反対だと廃止となります。
会社名 | 債権額 | 再生計画案への意見 |
---|---|---|
A社 | 50万円 | 反対 |
B社 | 100万円 | - |
C社 | 180万円 | - |
D社 | 30万円 | 反対 |
E社 | 40万円 | 反対 |
合計 | 400万円 | |
反対債権者数 | 3社 | |
反対債権額 | 120万円 | |
結果 | 債権者の頭数の半数以上が反対したため、廃止 |
債権額の過半数の債権者が反対すると、廃止となります。このケースでは、債権額の総額である400万円の1/2である200万円を超える債権額を有する債権者が反対すると、再生手続が廃止となります。上の例でいえば、B社とC社の2社が反対すると、反対している債権者の債権額はB社100万円とC社180万円であわせて280万円となり、廃止となります。
会社名 | 債権額 | 再生計画案への意見 |
---|---|---|
A社 | 50万円 | - |
B社 | 100万円 | 反対 |
C社 | 180万円 | 反対 |
D社 | 30万円 | - |
E社 | 40万円 | - |
合計 | 400万円 | |
反対債権者数 | 2社 | |
反対債権額 | 280万円 | |
結果 | 債権額が1/2を超えたため、廃止 |
小規模個人再生では、債権者の反対により廃止の可能性がある場合、まずは給与所得者等再生ができないか、次に自己破産や任意整理を検討します。
給与所得者等再生では、再生計画案の書面決議は行なわれないため、債権者の反対による廃止はありません。ただし、給与所得者等再生は、小規模個人再生よりも、返済額が増えるケースが多いので、注意が必要です。
給与所得者等再生で返済額が増加して個人再生が難しい場合には、債務整理の手段を任意整理もしくは自己破産とすることを検討します。この場合、財産状況や借入れの経緯などを考慮します。ホームワンでは、お客様にとって最適な債務整理の方法をご提案します。
東京都出身、1987年 弁護士登録(東京弁護士会所属)、ホームワンの代表弁護士 中原です。一件のご相談が、お客さまにとっては一生に一度きりのものだと知っています。お客様の信頼を得て、ご納得いただける解決の道を見つけたい。それがホームワンの願いです。法律事務所ホームワンでは過払い金・借金問題に関する相談を受け付けています。
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