個人再生で給与差し押さえを停止できる?

「給与が差し押さえられてしまったので、生活費をまかなうことができなくなって、家計がたいへんになった」ということで、個人再生のご相談に来られる方がいらっしゃいます。ただ、個人再生の申立てをすれば、すぐに給与差し押さえが停止するわけではありません。ここでは、個人再生の手続きと給与差し押さえ停止の流れを確認した上で、給与が差し押さえられて個人再生する場合の注意点について説明します。

個人再生の流れ

おおまかにいうと、個人再生の手続きは、申立て開始決定認可決定という流れで進みます。個人再生では、手続きとしては認可決定を受けることが最終的な目標になります。もちろん、認可決定を受けて、借金が大幅に減額された後も、ご本人は、おおむね3年かけて、借金を返済していかないといけません。

個人再生の申立て

債権調査など申立ての準備を十分に行なった上で、申立書を作成します。申立書の作成が済んだら、添付書類とともに裁判所に送付して、個人再生手続の申立てを行ないます。

個人再生手続の開始決定

申立後、裁判所の審査を経て、個人再生手続の開始決定が出ます。裁判所によっては、その前後で、履行テストや個人再生委員との打ち合わせが行なわれることもあります。履行テストとは、実際に借金を返済していけるか確認するために、おおむね6か月かけて、履行テスト用に作った口座に支払いをする作業で、積立トレーニングとも呼ばれています。

再生計画案の認可決定

開始決定後は、具体的にどのように返済していくかをまとめた再生計画案を作成します。再生計画案を裁判所に提出して、要件を満たしていれば、裁判所から認可決定が出ます。さらに、認可決定が出てから約1か月後に、認可決定が確定します。認可決定の確定後、再生計画に基づく返済が始まります。

給与差し押さえの流れ

借入先が借金をしたご本人の給与(財産)を差し押さえるためには、「債務名義」が必要です。債務名義には、確定判決、仮執行宣言付き支払督促、強制執行承諾文言付き公正証書が挙げられます。借入先がこれらの債務名義を取得している場合、借入先は、裁判所に対して強制執行(債権差押)の申立てを行ない、裁判所がこれを認めると、ご本人の給与(財産)が差し押さえられます。

給与差し押さえの場合、裁判所から勤務先へ「債権差押命令」が届きます。この命令が届くと、勤務先は、ご本人に差押分を差し引いた給与を支給します。差押分は、勤務先から借入先へ支払われます。

差押分は、給与から税金等を控除した額(いわゆる手取り額)の4分の1が対象です。ただし、手取り額が44万円を超える場合は、33万円を超える部分が差し押さえられます。つまり、給与差し押さえを受けた場合の手取り額は33万円が上限になってしまいます。
なお、「債権差押命令」は、ご本人よりも早く勤務先に届くため、ご本人は、勤務先から知らされるまで給与差し押さえに気づかないという怖さがあります。

このように、給与差し押さえを受けると、手取り額が大きく減ってしまうため、返済が必要になる個人再生を行なうことが難しくなってしまいます。そこで、個人再生では、手続きのなかで、給与差し押さえを解除させる方法が用意されています。

給与差し押さえ解除の流れ

個人再生手続きのなかで給与差し押さえを解除するためには、個人再生手続開始の申立てが必要です。個人再生手続開始の申立てと合わせて強制執行停止の申立てを行ないます。 裁判所が、強制執行の停止を決定すると、勤務先から借入先への支払いは停まりますが、給与から差押分が差し引かれることは続きます。

次に、開始決定が出たら、強制執行取消の申立てを行ないます。裁判所が強制執行の取消を決定すると、差し押さえが解除となり、本来の給与を得ることができるようになります。

給与が差し押さえられる前に手続きを開始する

給与差し押さえを受けるきっかけは、返済の遅れや滞納です。返済が遅れたり、滞納すると、借入先は督促をしますが、それでも滞納が続いた場合、借入先は、裁判を起こして債務名義を取得してきます。そして、借入先が債務名義を取得すると、現実的に給与差し押さえのリスクが生じます。通常の督促のなかで「強制執行予告通知」「法的手続予告通知」という書面でご本人にプレッシャーをかける手法もよくあります。

給与差し押さえを受けると、ご自身の手取り額が減るだけでなく、勤務先にも負担をかけてしまいます。そのため、継続的な返済が難しくなった場合は、早い段階で弁護士に相談して、給与差し押さえを回避する対策をとることをおすすめします。

個人再生で給与差し押さえを停止できる? まとめ

  • 個人再生で給与差し押さえを停止できる?
    個人再生では、手続きのなかで、給与差し押さえを解除させる方法が用意されています。
  • 差押分の金額はどのくらい?
    差押分は、給与から税金等を控除した額(いわゆる手取り額)の4分の1が対象です。ただし、手取り額が44万円を超える場合は、33万円を超える部分が差し押さえられます。つまり、給与差し押さえを受けた場合の手取り額は33万円が上限になってしまいます。
  • 給与差し押さえ解除の流れは?
    個人再生手続開始の申立てと合わせて強制執行停止の申立てを行ないます。開始決定が出たら、強制執行取消の申立てを行な、裁判所が強制執行の取消を決定すると、差し押さえが解除となります。

個人再生のよくある質問

代表弁護士中原俊明
中原 俊明法律事務所ホームワン 代表弁護士

東京都出身、1987年 弁護士登録(東京弁護士会所属)、ホームワンの代表弁護士 中原です。一件のご相談が、お客さまにとっては一生に一度きりのものだと知っています。お客様の信頼を得て、ご納得いただける解決の道を見つけたい。それがホームワンの願いです。法律事務所ホームワンでは過払い金・借金問題に関する相談を受け付けています。

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