小規模個人再生とは?給与所得者等再生との違い

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続きがあります。それら2つの手続きには、どのような違いがあるのでしょうか?個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続きがあります。ここでは小規模個人再生について説明したうえで、給与所得者等再生との違いについて解説します。

小規模個人再生とは?

個人再生とは、裁判所に再生計画の認可決定を受け、借金を大幅に減額してもらい、減額された借金をおおむね3年かけて返済する手続きのことです。小規模個人再生では、将来的に継続又は反復した収入があり、再生計画に則った弁済ができることが要件となります。

給与所得者でも小規模個人再生を利用できる?

サラリーマンなどの給与所得者は、個人再生では給与所得者等再生しか選べないということですか?という質問を受けることがあります。これはよくある誤解で、そんなことはありません。サラリーマンなどの給与所得者であっても、小規模個人再生の要件を満たせば、小規模個人再生を利用することができます

小規模個人再生の要件

小規模個人再生の手続開始要件は、次のとおりです。

  • 将来的に継続又は反復した収入があり、再生計画に則った弁済ができること
  • 債務総額が5000万円以下であること

また、小規模個人再生では、再生計画案について債権者による書面決議が行なわれますが、次の要件を満たさなくてはいけません。

  • 債権者の頭数の半数以上が反対しないこと、かつ、負債額の1/2を超える債権者が反対しないこと

個人再生ができる条件

小規模個人再生の流れ

小規模個人再生の全体的な流れは、以下のようになります(ホームワンに依頼した場合)。

  • ①受任
  • ➁申立て
  • ③開始決定
  • ④再生計画案の提出
  • ⑤再生計画案の書面決議
  • ⑥認可決定
  • ⑦認可確定
  • ⑧返済
  • ⑨完済

受任から申立てまでの期間(①~②)は、弁護士費用を分割払いするかどうかによって異なり、おおよそ3〜10ヶ月が目安です。申立てから認可決定までの期間(②~⑥)は、おおよそ6~7ヶ月です。認可決定から認可確定まで(⑥~⑦)は約1ヶ月かかります。確定した月の翌月から概ね3年(36ヶ月)かけて減額した借金の返済(⑧~⑨)を行ないます。

個人再生の流れ。手続きが完了するまでの期間はどれくらいかかる?

個人再生委員とは?

個人再生委員は、裁判所から選任され、債務者(本人)と面談し、資産および収入状況などを調査したり、適正な再生計画案の作成について債務者に指示をします。基本的に個人再生委員には弁護士が選任されます。
東京地裁では申立てと同日に個人再生委員が選任されますが、東京地裁以外の裁判所では個人再生委員が選任されない場合もあります。

履行テストとは?

個人再生では、裁判所の指示で、再生計画案どおりの返済ができるかどうかを事前にテストするために、積立トレーニング(履行テスト)が行なわれることがあります。 東京地裁の場合、個人再生委員が、積立トレーニング用の専用口座を開設し、その口座に申立てから1週間以内に第1回目を振込みます。金額は、再生計画案における計画弁済額とし、期間は6ヶ月間とされています。

債権者による書面決議とは?

小規模個人再生では、再生計画案を提出すると、裁判所は、書面決議に付する旨の決定を下します。裁判所は、債権者に対し、再生計画案に反対(不同意)する場合は、裁判所の定める期間内に、不同意である旨、回答するよう記載した書面を送付します。書面決議の結果、下記の2つの場合、再生計画案が否決されます。

  • 債権者の頭数の半数以上が反対する
  • 負債額の1/2を超える債権者が反対する

個人再生に反対する業者はいる?反対される見込みがある場合の対処法とは?

小規模個人再生のメリット

小規模個人再生のメリットとして「債務の圧縮」「分割払い」「住宅を残すことができる」という点が挙げられます。ここでは、それぞれのメリットについて説明します。

債務の圧縮

個人再生では、裁判所から認可決定を受けると債務が大幅に圧縮されます。小規模個人再生では、「①最低弁済基準」、「②清算価値基準」を比べて、高い方の金額を返済します。給与所得者等再生では、①と➁に加えて、「③可処分所得(収入から税金や生活費用として認められた費用を除いた金額)の2年分の額」を比較して、一番高い金額を返済します。そのため、一般的には小規模個人再生の方が、債務の圧縮幅が大きくなる(借金の大幅な減額)といえます。

①負債額から算出する金額(最低弁済基準) 負債額が100万円未満の場合は、負債額全額
負債額が100万円以上500万円以下の場合は、100万円
負債額が500万円超1500万円以下の場合は、負債額の5分の1
負債額が1500万円超3000万円以下の場合は、300万円
負債額が3000万円超5000万円以下の場合は、負債額の10分の1
②財産(清算価値)から算出する金額(清算価値基準) 不動産や自動車など、裁判所が「財産」と判断するものの価値の総額。

分割払い

小規模個人再生では、圧縮された債務をおおむね3年かけて分割払いしていくことになります。例えば、圧縮された債務額が108万円だった場合、毎月3万円を3年かけて返済していきます。返済期間については、特別の事情が認められた場合にかぎり、5年まで延ばすことができます。どのような場合に認められるかなど、詳しくは弁護士にご相談ください。

住宅を残すことができる

個人再生では、住宅ローン特則を適用することで、住宅を残すことができます。この点が、自己破産との最大の違いです。個人再生で住宅ローン特則の適用を受けるためには、次のような要件があります。

  • 本人が所有している(共有可)
  • 建物の床面積の2分の1以上が居住用である
  • 現在、本人が居住している

この他にも、住宅ローン特則にはさまざまな条件や注意点があります。詳しくは下記のリンクをご覧ください。

個人再生と住宅ローン特則

給与所得者等再生との違い

小規模個人再生と給与所得者等再生には、要件、返済額、申立ての制限について、それぞれ違いがあります。

要件の違い

「小規模個人再生」では、継続的に又は反復して収入を得る見込みのある人が対象となっていますが、「給与所得者等再生」では、一般のサラリーマンなど将来的に安定した収入があり、その収入の変動が少ないと認められる人が対象となります。

返済額の違い

給与所得者等再生の場合、返済する金額は、「①最低弁済額」、「➁清算価値総額」、「③可処分所得(収入から税金や生活費用として認められた費用を除いた金額)の2年分の額」のうち、最も大きい金額です。小規模個人再生との違いは、③の可処分所得の2年分の額も返済する金額の基準の一つとなる点です。家族構成や地域によりますが、一般的に、この可処分所得は高く算定されることが多いため、小規模個人再生の方が少ない額を返済する可能性が高いといえます。

債権者の同意は必要?

小規模個人再生では、債権者の同意が必要となりますが、給与所得者等再生では、債権者の同意は不要です。そのため、給与所得者等再生で書面決議によって再生計画案が否決されることはありません。一方で、債権者が1~2社、または1社で負債額の過半を占める大口債権者がいる場合など債権者の反対リスクが高いときは、給与所得者等再生を検討します。

給与所得者等再生は申立ての制限がある?

給与所得者等再生は、①過去に給与所得者等再生をしていて、再生計画認可決定確定日から7年が経過していない場合、➁過去に自己破産をしていて、免責決定確定日から7年が経過していない場合は給与所得者等再生を申し立てることはできません。一方で、小規模個人再生には、このような申立ての制限はありません。

小規模個人再生 給与所得者等再生
要件
(利用資格)
継続的に又は反復して収入を得る見込みのある者。 給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で、その額の変動の幅が少ないと見込まれること。
返済する金額 ①最低弁済額と②清算価値総額の大きい額。 ①最低弁済額と②清算価値総額に加えて、③可処分所得額2年分の一番大きい額。
債権者の同意 必要 不要
申立ての制限 制限なし 前回の手続きが給与所得者等、自己破産の場合は免責決定確定日から7年。

個人再生を成功させるポイント

個人再生を成功させるポイントは、早めに弁護士に相談して、依頼をすることです。弁護士に相談して、ご本人にとって最適な債務整理かということを確かめましょう。その上で、個人再生の手続きを進めるのであれば、弁護士に依頼しましょう。その他、小規模個人再生の場合は、個人再生を成功させるポイントとして、再生計画案に反対する債権者がいるか確認しておくことも重要です。

個人再生は9割超が認可決定を受ける手続きですが、確実に認可決定を受けるために、必ず専門家である弁護士に依頼しましょう。ただし、依頼後も、弁護士の指示やアドバイスに従わなかったり、弁護士に虚偽の説明をしているケースでは失敗してしまうこともあります。弁護士の指示やアドバイスにきちんと従って、個人再生を成功させましょう。

個人再生のことならホームワンへ

ホームワンは、長年、全国の裁判所で個人再生に取り組んできており、全国的な実績とノウハウがあります。個人再生は、人生の再チャレンジとして重大な手続きです。一度話しただけでは、手続きに踏み切ることが難しい方もいらっしゃいます。手続きを理解・納得して進めることが非常に重要です。そのため、ホームワンでは何度でも無料相談をお受けし、お客様の疑問や不安を解消することに努めています。 日本全国どこからでもご相談をお受けしていますので、どちらにお住まいの方でも、安心してご相談ください。

小規模個人再生とは?給与所得者等再生との違い まとめ

  • 小規模個人再生の手続開始要件は?
    将来的に継続又は反復した収入があり、再生計画に則った弁済ができることと、債務総額が5000万円以下であることです。
  • サラリーマンなどの給与所得者は、個人再生では給与所得者等再生しか選べない?
    サラリーマンなどの給与所得者であっても、小規模個人再生の要件を満たせば、小規模個人再生を利用することができます。
  • 小規模個人再生と給与所得者等再生で返済額に違いがある?
    給与所得者等再生の場合、返済する金額は、「①最低弁済額」、「➁清算価値総額」、「③可処分所得の2年分の額」のうち、最も大きい金額です。小規模個人再生との違いは、③の可処分所得の2年分の額も返済する金額の基準の一つとなる点です。

個人再生の最低弁済額とは?

代表弁護士中原俊明
中原 俊明法律事務所ホームワン 代表弁護士

東京都出身、1987年 弁護士登録(東京弁護士会所属)、ホームワンの代表弁護士 中原です。一件のご相談が、お客さまにとっては一生に一度きりのものだと知っています。お客様の信頼を得て、ご納得いただける解決の道を見つけたい。それがホームワンの願いです。法律事務所ホームワンでは過払い金・借金問題に関する相談を受け付けています。

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